ネトウヨたちが信じたい真珠湾攻撃の奇説
このようにして考えると、戦後発生した「親米保守」も、戦争経験がまだ鮮やかだった時代の「面従腹背型」と、戦争経験が薄らいでいく時代の中でそれに取って代わった「無思慮型」の二タイプの流れがあると言える。しかし現在主流となった「無思慮型」の人々も、「日本国憲法はアメリカの押し付け」と言い、靖国神社に参拝することを全肯定するのはほとんど変わらない。なおも存在する大きな矛盾を「無思慮型」の彼らはどう考えているのか。
それは戦前、戦中、敗戦直後のアメリカと今のアメリカは違う、という理屈である。ここから発生したのが日米開戦当時政権を握っていた米民主党は「反日」で、米共和党は「親日」だったとするトンデモ理論である。
米民主党悪玉論は1990年代の所謂「ジャパン・バッシング(当時のクリントン大統領がアジア歴訪の際、日本に寄らず中国を訪問して帰国したこと)」で盛んになったが、現在の彼らはクリントン政権のことなど忘れているので、理屈としては「太平洋戦争当時、ルーズベルトはコミンテルン(ソ連)の手先となっていたので日本に真珠湾攻撃をやるように仕向けた。一方、共和党のタフトやフーヴァーは親日派で日本圧迫に反対していた」というものだ。
この理屈は必ず歴史修正主義者の中から出てくるが、端的に言って出鱈目であり、真珠湾攻撃を受けてアメリカ議会は即時対日宣戦布告を審議(1941年12月8日)したが、上院において全会一致、下院においても388対1で対日宣戦布告は可決されている。米民主党が、米共和党が云々というのは関係がない。
「無思慮型」の人々は、「現在のアメリカは、日本の憲法改正と軍事的自立を望んでいる」とし、「日本国憲法を押し付けたのは過去のアメリカ」であると解釈して「アメリカによる憲法押し付け論」を正当化し、批判の対象はあくまでかつてのアメリカであり、現在のアメリカではないとしている。