基地問題に正面から向きあったクライムサスペンス
WOWOWが放送・配信する「連続ドラマW フェンス』(松岡茉優、宮本エリアナ主演)は、沖縄の米軍基地をめぐる現状をテーマにした意欲作だ。沖縄が日本に返還されて50年を経た今も、日本にある専用の米軍基地の7割が沖縄に存在する現実と、真正面から向き合っているクライムサスペンスだ。
5月にはモナコ公国主催の世界で権威のあるテレビ番組コンクールとされている「モンテカルロ・テレビ祭」で最優秀賞にあたるゴールデンニンフ賞にノミネートされた。同賞にノミネートされた9作品のうち、アジアでは唯一の作品となる(授賞式は現地時間6月20日)。
WOWOWの番組の大半は、ベストセラーとなった原作の小説をもとにドラマにすることが多い中で、本作は、オリジナルの脚本から生まれた作品であることも異色の作品。製作を担当したプロデューサーの一人、高江洲義貴氏は沖縄県出身。報道記者出身の北野拓(きたの・ひらく)プロデューサー、脚本の野木亜紀子さんらとともに、現代の沖縄が抱える問題を描き出し、見事なエンターテインメントが生まれた。
その企画から誕生までのプロセス、ドラマ化した背景にはどんな思いがあったのか、基地の街で生まれ育ったという高江洲プロデューサーにインタビューした。
──高江洲さんは沖縄・普天間出身ということですが、米軍基地との関わりはおありでしたか。
米兵は基地の外に住むことも多いのですが、僕の実家は米兵用の邸宅のハウスクリーニング業をしていますし、米軍との関わりは本当に当たり前のようにありました。
僕の母校である普天間第二小学校(※1)は、南側が米軍普天間飛行場とフェンス越しに向かい合っています。サッカーなどをしているとボールが基地に入ってしまうこともしばしばありました。そこでランニング中の米兵さんに言ってボールを取ってもらうことも多かったです。
劇中にもありましたが、下に穴を掘って、基地側に入ってしまったボールを取りに行くっていうこともしていました。その後、先生にバレて、穴は埋められました(笑)。
通っていた那覇国際高校も、昔、米軍の接収地だった那覇新都心にできた高校です。それくらい、米軍基地が当たり前の環境で生きてきました。
(※1)宜野湾市立普天間第二小学校…米軍普天間基地に最も隣接した小学校として知られ、「日本で最も危険な小学校」と言われている。2017年12月13日には、普天間第二小学校のグラウンドにアメリカ軍の大型ヘリコプターから重さおよそ8キロの窓が落下し、メディアでも大々的に報道された。幸い、このとき怪我人は出なかったが、普天間基地移転問題で、最初に引き合いに出される象徴的な存在となっている。