ゲームへの課金で自己破産した人も…
先の教員は言う。
「発達障害の子ってなかなか言うことを聞かないので、親も若いうちからゲームやスマホを与えがちです。そっちに関心が向いてくれれば、手がかかりませんから。けど、子供たちが一旦ゲーム依存になると、ゲームから切り離すのがすごく難しくなるんです。
発達障害の子は、なかなか周りの言うことに耳を傾けませんし、パニックになると極端な行動に出ます。ひざを突き合わせて話し合うということが苦手。そうなると、家族や学校だけでは対処しきれず、医療機関につなげるしかなくなるのです」
それでも、学生のうちであれば、親や教員がそばにいるので問題に気づきやすいし、深刻なことになる前に医療機関につなげられる。問題は、彼らが成人して、家庭から独立した後にゲーム依存になるケースだ。
発達障害があっても、症状が大して重くなければ、彼らは一般企業に就職するなり、事業所に入るなりして、部屋を借りて自立して生きていくことになる。
ところが、彼らは自立して社会に出ることで、よりストレスをためやすい環境に置かれる。それがきっかけとなって、ゲームにのめり込むと、なまじっか家族や支援者と離れている分、ゲーム依存に陥りやすい。家から一歩も出ずにゲームをしたり、見境なく課金をしたりするのだ。
事業所で働くスタッフは次のように語る。
「昔から発達障害の子の自立には、お金の管理が苦手という問題がありました。発達障害があると、自己コントロールするのが不得意なのです。だから欲望のままに物を買ってしまったり、言われるままにお金を出してしまったりする。それで生活がたちゆかなくなることがよくあったんです。
実は、ゲームにはこうした要素が満載なのです。ゲームの中には課金システムがあり、あの手この手で課金への欲求を刺激します。そうなると、もともと自己制御ができない発達障害の子たちが、どんどん深みにハマっていって、気がついたら自己破産しなければならないくらいの事態になっていることもあるのです」
ゲームでは、企業の優秀な開発者たちが英知を集結してユーザーが課金するように誘導している。ビジネス的な戦略といわれればそれまでだが、発達障害の人にとってはそうした戦略に誘導されやすいという特質があるのだ。