代表の躍進が国内リーグ人気を底上げ 

 ◎チェルシー―バルセロナ(4月22日 スタンフォード・ブリッジ@ロンドン)

【現地取材】バルサ、アーセナル、チェルシー…ビッグクラブが続々と資金を投入。欧州女子サッカー「爆発的人気」の背景にあるしたたかなビジネス戦略_2
会場となったスタンフォード・ブリッジの正面入り口。チェルシー女子チームの試合では大一番でのみ使用される

試合前、イングランドの女子サッカーに精通した英紙デイリー・テレグラフのトム・ガリー記者に話を聞いた。テレグラフはイギリス高級紙の中でもサッカー報道に力を入れている新聞で、彼は女子サッカー番となって9年だという。

「今期の女子スーパーリーグ(以下、WSL。男子のプレミアリーグに相当)では、チェルシーのようなビッグクラブのホームゲームだと3000~4000人ほどの観客が入りますね。上位同士の好カードとなると、1万人を超えることもあります」

意外な数字だった。日本の女子サッカーのトップカテゴリーであるWEリーグに比べるとはるかに多い動員数なのだが、驚くほどの大盛況というわけでもない。

それでもイングランドにおいては、昨年までと比較して国内女子リーグの観客数が伸びているという。

「やはり去年、イングランド代表が女子ユーロを制したことが大きいです。もっと遡れば2015年カナダ女子W杯での3位入賞、2019年フランス女子W杯での4位入賞など、国際大会での好成績がポジティブな影響を与えていることは間違いありません」

こうした状況や昨今の社会的風潮を踏まえ、特にプレミアリーグのビッグクラブは女子部門の強化に本腰を入れ始めているとか。

「男子並みとは言わないまでも、各ビッグクラブは女子部門に多額の資金を投じています。さらにWSLでは通常、サイズの小さいセカンドスタジアムで試合が行われることが多いのですが、今日のバルセロナ戦のように多くの入場者が見込めるビッグマッチでは、男子がプレミアで使うメインスタジアムを会場にして収益増を図るとともに、試合や女子チームそのものの『格』を演出するようになりました」

だが平均で3000~4000人、まれに1万人越えというレベルの動員という現状を考えると、ビッグクラブは投資額に見合うだけのリターンを女子部門から得られているのだろうか。