なぜ事件を起こしたか、心当たりはありますか?
――親子の会話はありありましたか?
自分は土木関係の仕事でずっと働いていたんですけど、裕も高校に入って手もかからなくなってきたので、「もっと自分のスキルを上げたい」と思って、新潟にある知人の建設会社に入ったんです。ちょうどその頃は新潟での地震もあったので、瓦礫の処理など、北陸の方で仕事ばかりしてました。
最初は自宅から通ってましたけど、会社近くの社宅に住み込みで、1カ月ほど帰ってこないときもありましたので、今思うと、裕も寂しかったのかもしれませんね。一緒に過ごす時間もだんだん減っていったので、おのずと親子の会話も少なくなっていったと思います。
――剣道以外で、裕さんに趣味はありましたか?
中学生の頃からテレビゲームはよくしてました。剣道部から帰ってきたら、2階の居間でよく兄弟3人で楽しそうにプレイしている姿もよく見ました。でも中学生の頃は「ゲームは2時間まで」とルールを決めていたので、それを破ったときは、裕を怒鳴ったこともあります。高校生になってからはそのルールもなくし、また帰宅部だったので、帰宅後はテレビゲームばかりしてました。高校にはいると近所のコンビニでバイトをしてました。貯めたバイト代で、新しいゲームソフトを買っていました。
あとは映画も好きでした。おもに見ていたのは洋画で、近所のレンタルビデオ店に入り浸り、週末は高崎の映画館に足を運んでいました。東京に出てからも一度「ムビチケってどうやって登録するの?」とメールが来ましたから、映画は今も好きだと思います。
――“普通”とおっしゃっている裕さんがなぜこんな事件を起こしてしまったのか、心当たりはありますか?
正直ないですね…。強いて言うなら、おばあさんが亡くなったことでしょうか…。3兄弟の長男は高校卒業してすぐに自衛隊に入隊。25才で結婚したんだけどすぐに離婚して、県外に引っ越してしまいました。そして今から9年前、裕が上京する直前に、おばあさんも亡くなってしまって…。
ウチのおばあさんはとにかく明るい人で、家庭の中心にいたので、やっぱり亡くなってからは、少し家庭が寂しくなった気はしましたよね。会話が減ったとかではないんですけど、なんとなくポッカリと穴が空いたというか。その頃は自分も転職して、県外に仕事に出かけることも増えたので、もしかしたら裕も寂しかったのかもしれません。
ただ、自分も仕事が忙しいながらも、子供には愛情を注いできたつもりですし、裕は優しくて思いやりのある子だと思っていました。群馬を出てからのことは知らないけど、本当に事件のことを知ったときは、その分ショックが大きかったですね。私も早く警察から事件の詳細を聞きたいです。
東京での9年間という年月が、「優しくて思いやりのある子」を徐々に蝕んでいったのか。身勝手な動機で未来を突然奪われた女性に、手を合わせるしかない。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班