懸念される神宮球場の「ビル風」「騒音」問題
まず、今回の再開発で神宮外苑がどのように変化するのか。再開発前後の図面を左右に並べたのが以下スライドだ。
*丸数字は再開発による被害8点。本記事ではスポーツ(野球、ラグビー等)に関係する部分のみ抜粋して紹介
最も大きな変化は、競技場の入れ替え。神宮野球場は現在の秩父宮ラグビー場の位置へ移転(⑥)。その秩父宮ラグビー場は現在の神宮第二球場および建国記念文庫の森(神宮第二球場の右上に位置する三角形のエリア)の位置へ移転する(⑦)。
さらに、実はこの図面では伏せられている移転もある。絵画館前の芝生広場(図面右上のU字のエリア)にある軟式野球場は廃止され、現在は3ヶ所に分散しているテニスコートがまとめて移転する(⑧)
この点について東京都は「別事業である」等を理由に軟式野球場廃止(テニスコート移転)および樹木伐採は図面やイメージ図に反映していない。もともと神宮外苑は3つの区(新宿区、港区、渋谷区)にまたがっており、事業や許可申請が分かれていることを東京都および事業者は悪用していると言える。
また、イメージ図からは被害の深刻さがさらに具体的に見えてくる。
まず神宮野球場の周囲に高層ビル群(事務所棟 190m、複合棟A 185m、複合棟B 80m)が乱立。(④)これによって神宮野球場は高層ビルによる日陰とビル風が常態化し、試合に悪影響を及ぼす可能性が高い。(⑥)。
さらに神宮野球場移転による被害は近隣の住環境にも及ぶ。イチョウ並木の先に位置する都営住宅に対する神宮野球場の騒音レベルは、実は現在も環境基準を超えている。それにもかかわらず、双方の距離が現在の160mから80mに半減するため、騒音問題の悪化は確実視されている。神宮野球場の声出し応援を制限したり、改善しなければ住民による提訴の可能性もあり得る(⑥)。
そもそも神宮野球場は1926年から東京六大学野球のリーグ戦に使用され、1934年にはベーブ・ルースを含む大リーグ選抜の来日試合など歴史的な試合も数多く開催。この日米野球での大敗が後の大日本野球クラブ(現在の読売ジャイアンツ)の結成に繋がり、まさに日本のプロ野球誕生にも関わっている。神宮野球場を安易に建て替え・移転することは、約100年の歴史を誇る歴史的文化財の喪失を意味するのではないか。
*神宮野球場の歴史的価値の詳細は、同球場に特化したオンライン署名の説明文参照