日本での大麻への理解が世界と異なる理由
厚生労働省が2017年に発表した「薬物使用に関する全国住民調査」では、全国15歳以上64歳以下の大麻の生涯経験率は1.4%と、アメリカやカナダでは経験率は40%を超えていることに比べて非常に低い水準なのが特徴だ。日本での経験者が海外と比べて少ないのは、1948年に制定された大麻取締法があるためだ。
現在の日本では、大麻取扱者以外による大麻の所持、栽培、譲受、譲渡、研究のための使用が禁止されている。これを違反すると非営利目的でも5年以下の懲役という罪が科されるのが現状だ。
「一度逮捕されてしまえば、職を失い、学校を退学になり、家族関係にも影響がでます。ですが、病気のために藁にもすがる思いで大麻に手を出すという人もいます。そのような人たちも犯罪者として裁かれるべきなのでしょうか? マリファナマーチにはストレッチャーや車いすでデモに参加する人もいます。本当に大麻を必要とする人たちが、大麻を適切に安全に使えるような社会になることが必要だと思います」
また、数年前に根岸さんがデモ申請を行うために警視庁を訪れた際、ある警察官に奥さんがリウマチを患っていることを話すと「うちの父親もALS(筋萎縮性側索硬化症)なんです」と告白してきたという。そこで根岸さんが医療用大麻の有効性について説明すると「父にも大麻を使用できたらな」とつぶやいたそうだ。
「若い警察官と話す機会もありますが、今の若い人は覚醒剤と大麻の区別がついている人が多いと感じています。だからこそ、丁寧に医療用大麻の話をすると『これは必要なんじゃないか』と理解していただけます。
問題は、政府やマスコミが偏った情報操作によって正確な情報を出さないために正しい知識が広がらないこと。そして『危険』や『怖い』といった固定観念や誤解が生まれていることです」
特に、根岸さんが大麻に対する理解が進まない原因と指摘しているのが、厚生労働省が主催する薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイ。」キャンペーン。これは麻薬や覚醒剤など薬物乱用を防止する運動だが、このキャンペーンでは大麻が他の覚醒剤と同様に扱われていることが大きな問題だという。
日本で大麻合法化を目指す上で、まずは大麻が他の覚醒剤などとは異なること、そして大麻に対する正しい知識を得られるようになることが大事だと根岸さんは話す。そのため、マリファナマーチでは警察も麻薬取締官も誰でもウェルカムに受け入れて、大麻の正しい知識や情報を知ってもらうための機会を社会に提供している。