「東京って一筋縄じゃいかんね」
そんな状況の中、6月になってキャンペーンが終わると、それまでが噓のようにパタリと客足が止まったのです。それは予期しない出来事でした。キャンペーン中、毎日のように並んでくれたお客さんはたくさんいました。すごく仲良くなっていた人もいたのですが、みんな6月1日を境にピタッと顔を出してくれない。
「東京の人ってこんな冷たいんか……」と人間不信に陥りそうでした。
広告塔の役目を果たしていた行列がなくなったこともあって、忘れていた地下のハンデをあらためて痛感することになりました。「あー、信じられんわ……」とスタッフ全員でボヤいていました。
「あんなに仲良く話しもしてた人ら、どこ行ったんやろ」
「違う店でランチ食べとるんかな」
「東京って一筋縄じゃいかんね」
「もう大丈夫やろ」という気持ちがわずかとはいえあったことは認めなければいけません。
すぐに客足が止まってしまったことで、現実を突きつけられ、素直に自分の考えが甘かったことを反省しました。いわくつきの地下物件の店に大行列ができたのは、街宣やポスティングをなりふりかまわずやったから。
「よっしゃ! また街宣やっぞー!」
ぼくらは気合いを入れ直して、再び自分たちでポスティングと、朝昼晩の街宣を始めました。目立つようにプラカードやのぼりを持って、誰にも負けない大声を張り上げます。これが本気度をアピールする最大の力になります。そうすると人が集まってきて、メディアにも注目されるようになっていきました。
「いま、噂のゴーゴーカレーです!」
「クセになる味、ゴリラのゴーゴーカレーです!」
やっぱり本気で汗をかくと人の心に届くようです。新しい常連さんがじわじわと増えてきて、少しずつ客足が戻りました。こうして店内は、再び活気に包まれたのです。初心に返って「本気」がキーワードであると目覚めさせてくれた、6月最初の出来事でした。