2023年3月28日に71歳で永眠した坂本龍一さん。

「教授」の愛称で親しまれてきた坂本さんは1952年生まれ。幼い頃から作曲を学び、東京芸大在学中にスタジオミュージシャンとしても活躍。1978年にはYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)を結成し、翌年には日本レコード大賞編曲賞を受賞。
また、俳優としても出演した1983年公開の『戦場のメリークリスマス』では、作曲したテーマ曲「Forbidden Colours(禁じられた色彩)」が当時の全英チャートにランクインするなど、世界のサカモトとしての地位を高めていった。

多彩なジャンルにわたって数多くの名曲を世に送り出した坂本氏だが、ロックミュージシャンの忌野清志郎さんとコラボレートした、1982年リリースの資生堂のCMソング、『い・け・な・いルージュマジック』もそのひとつだ。

追悼 坂本龍一氏「キヨシなんか最高さ! キミの声はすごくセクシーだよ」忌野清志郎との伝説の対談をプレイバック_1
『い・け・な・いルージュマジック』(ロンドンレコード)。忌野清志郎と坂本龍一とのコラボレーションシングルは、忌野の実質的なソロデビューシングルであるというから驚き。作詞作曲はもちろん両名が担当。メイクを施した2人が登場するレコードジャケットやPVがおしゃれすぎると男女問わず話題となった
すべての画像を見る

週刊誌芸能デスクが解説する。

「作詞・作曲も清志郎さんと坂本さんが担当したCMソングで、本来は資生堂が提示した仮タイトルは『すてきなルージュマジック』だったが、お二人が独断でタイトルを変えてしまったのは有名な話。
リリースから2か月で50万枚以上を売り上げ、プロモーションビデオでは突然、清志郎さんが坂本さんに熱烈にキスしたことも大きな話題になりました。偶然か運命か、坂本さんの死が明らかになった4月2日は清志郎さんの誕生日でもあります」

また、本ナンバーのリリースされた1982年に芸能週刊誌「週刊明星」(1991年休刊/集英社)にて2人の対談企画も行われている。当時多忙を極めたであろう2人の奇跡のようなツーショットと、ミュージシャンとして互いにリスペクトしあう心が伝わってくる貴重な企画だ。

〈追悼 坂本龍一氏〉「キヨシなんか最高さ! キミの声はすごくセクシーだよ」忌野清志郎との伝説の対談をプレイバック_3
「週刊明星」1982年 3月11日号より。撮影/今津勝幸

「週刊明星」で撮り下ろされた見開き写真は、おどけた表情で座禅を組む若かりし頃の坂本さんと清志郎さん。
対談では、お互いの第一印象についても語られおり、互いに「オレたちってヘンかなァ?」と言いながらも、親しげな様子が伺える。

坂本 オッ、元気でやってる?

忌野 ウン、げ・ん・き!

坂本 なあ、オレたちってヘンかなァ?

忌野  ヘンじゃないかッ!

坂本 そうか…やっぱりヘンなんだなァ(笑)。声もそうだし。

忌野 でも教授(坂本)はいい声してると思うヨ。

坂本 声コンプレックスなんだけどね。ホラ、唇が多くて歯にすきまがあってサ。

忌野 レコーディングの時のコーラスは感じるところがあったよ。もっと歌えばいい。

坂本 コーラスはボクもそう思ってたんだ、フヒヒ。でもキミの声はすごくセクシーだよ。RC(※RCサクセション)のステージも最高! あのカンジをもっと出したい、ってボクなりに考えていたんだ。

忌野 それで今度の歌ができたんだよ。初めて会ってスグにね。以前、教授に曲を頼まれた時はツアー中でダメだったし。

坂本  去年テレビでライブを見て、なにか一緒にやれたらナ、と思ってたんだ。

忌野 やっとそれが実現して良かったよ。一緒にやっててとても自然だったし。やっぱりオレたち、通じるところがある。

「週刊明星」1982年 3月11日号より抜粋