対話型AIで、よくも悪くも激変する我々の未来とは

“調べたいことをAIに聞くだけで答えをもらえる時代が来る”という話が出たが、こうした対話型AIの発展で我々の生活はどう変わるのだろうか。

「ネット上に無数にあるサイトへの入り口としては、依然として検索エンジンは優秀なので一気に廃れることはないでしょう。しかし、ピンポイントの情報を得たいときに、“サイトを比較する”必要のない対話型AIの簡便さは非常に便利なので、今後かなり広がっていくでしょうね。

また、最新のGPT-4が今後ペッパーくんのようなロボットや、スマートフォンにタブレット、スマートスピーカーといった機器に導入されていけば、SF映画などによく登場する自然に対話ができるAIのイメージにかなり近いものが、割とすぐに登場する可能性が高くなったと実感しています」

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神崎氏は、こうした技術は単なる会話ができるものという枠を超えて広がると予想する。

「ChatGPTはあらゆる分野で文章を作成する作業の初期段階に応用できるスペックを持っています。例えば、論文のドラフトを書いたり、小説のプロットを書いたりすることができるほか、長文から要点を抜き出すなど、今まで人がやっていた作業を肩代わりしてくれます。
そのほかにも、『こういうプログラムを作りたい』などと言うと、指定したプログラム言語でコードの構文を生成してくれたりします。ですから多くの企業が簡単な作業を対話型AIに任せるようになっていくと、人間から職を奪ってしまうという懸念を抱く人はたくさん出てくるでしょう。

これらのAIは広義にはジェネレーティブAI(生成系AI)と呼ばれていますが、今はこうした生成系AIは文章や物語だけでなく、イラストや絵画、楽曲などを生成することもできるようになっています。イラストや絵画では『Midjourney』が大きな注目を集めていますが、ChatGPTとMidjourneyを組み合わせるという使い方もできるでしょう。
たとえば一度ChatGPTにほしいイメージを適切に言語化してもらってから、その文章をそのまま『Midjourney』に入力することで、精度の高いイラストが作れることもネット上では報告されています。このように、他の生成系AIサービスと組み合わせることで有用性が上がる事例は今後も増えていくかもしれません」

だが、神崎氏はこうした対話型AIにはまだまだ欠点があるほか、使用することで我々がデメリットを被るリスクもあると教えてくれた。

「回答の幅を広く持つために曖昧さを許容したり、ネット上のビッグデータを学習ベースにしているので、真偽が曖昧な情報やフェイクニュースも一部取り込んだりするという欠点があり、それゆえに情報の正確性に欠けると指摘されています。そのため現時点ではビジネスで使うことを禁止している企業も多くあります。
また、ネット上の情報を持ってきてしまうという意味で、著作権侵害を知らないうちに犯してしまう可能性も十分にありますし、教育という面では子どもたちの創造性を妨げる可能性も考えられます」

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それだけではなく、もっと直接的なリスクも考えられるという。

「今年4月2日、ベルギーで環境破壊に伴う大災害の恐怖にさいなまれていたという男性が、対話型AIとこうしたテーマについて約6週間も会話を続けた末に、対話型AIに『私たちは天国でひとつになって共に生きましょう』と回答され、その直後に自殺してしまうという悲劇が起きたのです。もちろん対話型AIが直接の原因かどうかは断定できませんが、人のように流暢に会話ができても、相手の気持ちやその先の行動を予測して会話ができるわけではない対話型AIは、心理を意図せず人間を動かしてしまう危険性は、今後解決すべきポイントになってくるかもしれません」

取材・文/TND幽介(A4studio)