医療系だけどテクノロジードリブン
インフルエンザが3年ぶりに流行している。先日インフルエンザと診断された筆者の友人は、「(軽症で済んだ)コロナよりキツかった」とうめくように漏らしていた。そしてもう一つ、大変だったと彼が振り返るのが「病院での待ち時間」だ。
インフルエンザのような症状があって、医療機関を受診する場合、一般的には「インフルエンザ迅速検査」をすることになる。この場合、診察のときに鼻や喉の奥を綿棒などで拭われたあと、結果が判明してまた診察室に呼ばれるまでに、待ち時間が発生する。
ただでさえ体調が悪い中、外出し、さらに待つことになるというのは、患者にとって負担になることがあるだろう。
では、もし最初の診察のときに、一気に「インフルエンザかどうか」の結果まで判明したら–––––。診察室に戻る必要がなくなり、患者の負担は大きく減る。こんな夢のような話が、あるユニークな医療スタートアップにより、すでに実用化されているのだ。
その医療スタートアップとは、2017年11月創業のアイリス株式会社だ。代表取締役は医師でもある沖山翔氏。救命救急医として勤務したあと、医療ベンチャーの株式会社メドレー執行役員を経て、アイリスを起ち上げた。取締役副社長CSOの加藤浩晃氏も医師で、厚生労働省に出向経験がある。
そう聞くと「医療色の強い風土」を想像してしまうが、アイリスは社内に優秀なエンジニアたちを擁するテクノロジードリブンの企業でもある。同社の複数のメンバーは、Google運営のAIコンペプラットフォーム「Kaggle」にてGoldメダルを獲得している。
アイリスが取り組んでいるのは、AIを活用した医療機器の開発だ。そして2022年12月、ついに最初のプロダクトである「nodoca®」の一般販売をスタートした。
日本では医療機器を勝手に製造販売することはできない。アイリスももちろん、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査を経て医療機器の承認を受けている。しかし、「AIを活用した医療機器」というまったく新しい医療機器の審査においては、苦労も多かったという。
日本初(※1)のAI搭載「新医療機器(※2)」は、いかにして誕生したのだろうか。同社執行役員の田中大地氏に話を聞いた。
(※1)PMDAが公開する令和3年度~平成23年度の新医療機器の一覧及び令和4年度の承認医療機器を確認する限りの情報
(※2)「医療機器の製造販売承認申請について」(平成26年11月20日 薬食発1120第5号)」第1・2(2)が定める定義