英語をはじめとする国際色豊かな教育

そして、近年のグローバル化も反映して、「英語を軸にした国際色豊かなプログラムや、新たな教育内容を展開している」ことも、この新設難関校の特徴と言えるだろう。

廃校寸前だった女子校を共学化して人気校に成長した広尾学園や、2年前に募集を開始した系列校の広尾学園小石川(旧村田女子)、2015年に共学校に改称した三田国際(旧戸板女子)と開智日本橋(旧日本橋女学館)や、理系教育に力を注ぐ横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校附属などが、その代表例だ。

これらの新設校が掲げる、高い語学力を養い、論理的思考を培うプログラムは、海外への留学を視野に入れている層や「自分とは異なる教育を受けさせたい」という親世代中心からも、高い支持を集めているという。

中学受験生を持つ親が気を付けるべきこと

急激に偏差値が伸びた新設校は、素晴らしい教育理念やプログラムを持ち、それらの魅力を伝える手法に優れていることが多い。しかし、安本氏は「学校からのメッセージを受け取る保護者サイドには、ある種の“危うさ”も垣間見えることがある」という。

「『名前が変わる共学校の説明会に行った』というある保護者が、『とても素晴らしかった』と僕に言うので、その理由を尋ねてみると、『6年後、東大に〇名合格させると言ってくれたんです』と返ってきました」

《中学受験》渋谷教育学園渋谷、広尾、三田国際、サイフロ…親世代が知らない中学・高校はいかにして難関校になったのか。カリキュラムや進学実績だけでない人気の理由_3
学校の良し悪しは偏差値だけでは計れない
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まだ、誰も入学者のいない学校の“進学目標”に胸を躍らせたり、特別選抜入試に合格しただけで、あたかも難関大学に合格したような気分に浸ってしまう夢見る保護者の多さを安本氏は指摘する。そして、中学受験における学校選びのポイントについても言及する。

「名門校が名門である本質は、そこに集う人々の素晴らしさにあると思います。『母校のどこが好きか?』と尋ねられて、『進学実績』と答える人はいないでしょ。確かに、子供が難関大学に合格し、良い職に就き、安定した生活を手にすることも中学受験をする大きな目的でしょう。
ですが、親が果たすべき1番の役割は、『自分の子供を、カッコ良い大人に育てること』にあるわけです。子供を一人前の大人にするために、人間として最も成長する6年間を、どのような環境で過ごさせるべきなのか、それ以外に学校を選ぶ理由はないと思います。
学校を選ぶという中学受験の本質を考えながら、本当の未来予想図を描くのが、親の努めだと思います」


取材・文・撮影/白鳥純一