優秀な生徒の確保を実現した受験日程

桜蔭や開成などの“御三家”と呼ばれる難関校は、年に1回の試験で合格者を決めているが、新設進学校には、午後入試をはじめとする複数の試験日程や、さまざまな試験方式が設定されており、優秀な受験生の併願校として選ばれやすい体制を整えている点も特徴だ。

実際に新設校の日程を見ると、4〜5回の試験日程が組まれており、まずは、優秀な受験生の併願校に選んでもらうための工夫が垣間見える。

そして、実際に入学した一部の生徒が、6年後の進学実績を築き上げ、それらが下の世代の優秀な学生を呼び込む。このサイクルを繰り返すことによって、難関校としての地位を築いていくことが可能になる仕組みだ。

■主な新設進学校の試験実施日程と試験実施回数
・広尾学園:4日程・5回
・広尾学園小石川:5日程・5回
・三田国際:4日程・5回
・開智日本橋:4日程・6回
(※2023年の募集要項より抜粋・帰国子女入試含まず)

現在の加熱する首都圏の中学入試と、似たような傾向が見られたエリアがある。それが、今から10年ほど前までの千葉エリアの中学入試だ。

「首都圏に先駆けて行われる千葉県の中学入試は、長年に渡って東京の受験生の“試し受験”の場として使われてきましたが、近年は大幅に難易度が上昇し、都内の難関中学に合格した生徒が、千葉の中学を選ぶケースが増えてきました」

実際に、優秀な学生が集まりやすくなった千葉県の進学校は、東大合格者74名を輩出した渋谷幕張や15名の市川、早慶などに抜群の実績を残す東邦大東邦といった人気校を筆頭に、首都圏エリアの難関校と遜色のない数字を残すようになった。

《中学受験》渋谷教育学園渋谷、広尾、三田国際、サイフロ…親世代が知らない中学・高校はいかにして難関校になったのか。カリキュラムや進学実績だけでない人気の理由_2

安本氏は、人気を集める進学校についても、次のような見解を述べる。

「どんなに難易度の高い学校でも、学校の本当の評価が定まるまでには、10年くらいの時間を要すると僕は思っています。近年の首都圏エリアで新設された人気進学校の真価も、徐々に学校の文化が醸成され、卒業生が活躍を始めた頃に、より深く浮き彫りになっていくのではないでしょうか」