師曰く「石川県でパンケーキ屋をやりなさい」

「レッスンでは、台本を読んで、どんなシーンで、どんな役割がその役にあるのかを言葉にしていったり、“演技の筋トレ”みたいなことをしたり。

例えば、『自分が失って一番怖いものを今、取られました。はい!そのときなんと言う!?』と言われて、即興でお芝居をするんです。

そんな日々を繰り返して、地味に地道に、自分が行きたい矢印の方向に向かう行動を起こしました」

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しかし、なかなか日の目を見なかった。当時、心に響いたというのが、俳優で義父の故・古谷一行氏の言葉。

「『どんなに小さい役でも、誰かが見てるよ』と言ってくださって。確かに誰も見てないということはないので、少しでも爪痕を残すために誰よりも努力してやると思いました。

10秒くらいしか出ない役でも、歩んできた人生を想像してその場所に行き、ひとりで生活してみたり。異常なまでの努力をして、絶対、次につなげてやると思ってました」

努力が実を結び、徐々に映画のオファーが増加。2020年には、市井昌秀監督『台風家族』と白石和彌監督『ひとよ』の演技が評価されて、ブルーリボン賞助演女優賞に輝いた。

女優業の一方で挑戦していたのが、パンケーキカフェのプロデュース&経営だ。

「私には、人生の師匠みたいな人がおりまして。その方に、出産のタイミングで、こう勧められたんです。

芸能界の仕事だけでは視野が狭くなる。自分を成長させてくれて、世の中のことがわかるのは商売だと。

石川県には新幹線が通って観光地として必ず盛り上がるから、『石川県でパンケーキ屋さんをやりなさい』って(笑)。それでやってみようと。

私には、やると言ったらやらないのはダサいみたいな、体育会系のノリがあって。師匠が言うことは毎回正しいし、芸能界にしがみつく苦しさも感じていたので、怖いと思いながらも、踏み出しました」

金沢市の古民家をカフェにリノベすることにしたものの、障壁が立ちはだかる。

「国の指定文化地域にあったので、地元を守る会のOKが出ないと、不動産屋も貸してくれないんですよ。

だから企画書や事業計画書を持って、公民館でおじいさま方にプレゼンするんですけど、全然、OKが出なくて……。

銀行にお金を借りてるし、着工の準備も進めていたので、追い詰められて、泣きながら金沢で弁当を食べるような日々が1年続きました」

そうしてついに2016年にオープンさせた「Cafeたもん」は、金沢の人気スポットのひとつになっている。