人生の居場所なんて、そう簡単には見つからない

「一生見つからない人もいるかもしれない。それが“自分の居場所を探している”ということ」米倉涼子が国際霊柩送還士を演じて直面した現実_3

──第一話で「みんな必死に居場所を探しているんだ」と言うセリフがあり、すごく印象に残っているのですが、米倉さんはこのドラマを通して影響を受けたシーンや言葉などありますか?

脚本を読んだとき「みんな居場所がなくて探している」ということにハッとしました。

確かに仕事を探すのは大変じゃないですか。学生は就職活動をしなきゃいけないけれど、「自分には何の仕事がいちばん合っているのか」なんてわからない。学生時代の経験だけではすぐにわからないと思うんですよ。このドラマでも、新入社員の高木凛子(松本穂香)は、いくつかの会社を経て、私が演じる伊沢那美の会社「エンジェルハース」に来たわけですから。

自分の居場所は、長い人生の中でひとつひとつ経験を積み重ねて見つけていく。もしかしたら、最初に就職した会社で向いている仕事が見つかる人もいる一方で、一生かかっても見つからない人もいるかもしれない。それが「居場所を探している」ということなんだと、演じながら腑に落ちた感じがしました。

「一生見つからない人もいるかもしれない。それが“自分の居場所を探している”ということ」米倉涼子が国際霊柩送還士を演じて直面した現実_4
新入社員の高木凛子を演じた松本穂香(左)

──米倉さんは、芸能界に、自分の居場所を求めていらっしゃったんですか?

そんなことは全然ないです。最初から芸能界を目指していたわけではなかったので。でも、じゃあ私には他に何があるのだろう、何ができるのだろうと考えたとき、やっぱり俳優の仕事なのかもしれないと思っています。ただ完全に居場所を確保できているとは思っていないし、スキルがまだまだ足りないです。

学生の頃はトリマーになりたかったんですけど、果たしてトリマーとしてちゃんと仕事ができるのかと思うと、できないような気もします(笑)。

死と隣り合わせなんて思ったことなかった

──このドラマには「死を扱うことは生を扱うこと」という印象的なセリフがあります。コロナ禍が3年も続き、世界の人々の死生観も変わりつつある中、このドラマは大きなメッセージを発していると思います。米倉さんはドラマを通して、伝えたいメッセージはありますか?

そうですね。世界中の人が想像もしなかったコロナというウイルスに振り回され、3年間、台風の目の中にいたような感じでしたよね。

私もそうですけど、海外旅行に行ったり、留学したり、仕事で海外へ行くとき、死と隣り合わせだなんて誰も思っていないじゃないですか。でも何かが起こるかもしれない、いつでもその可能性があるんだと感じました。

でも、死に至るまでは必ず生がある。利惠さんはご遺体の生前を大切に考え、ご家族がいい思い出を胸にちゃんとお別れができるように、どんなに酷い状態で運ばれたご遺体でも、できる限り生前に近い状態まで修復するんですね。そうすることで、ご遺族も、亡くなった方の思い出を胸に、自分の人生を進むことができるのかもしれないと思いました。

──やりがいはありますが、難しいお仕事ですよね。

そうですね。死を扱う仕事を選ぶ人は多くはないかもしれません。でも国際霊柩送還士の仕事に従事している方たちは、この仕事を選んでやっています。自ら選択して始めた仕事をどれだけ誠実にやり遂げるかというのが、このドラマのメッセージでもあると思います。