活動弁士が活躍していた時代の映画愛
『カツベン!』(2019) 上映時間:2時間7分/日本
周防正行監督の『カツベン!』(2019)は、もっと昔、まだ映画というものが発明されたばかりの約100年前の物語。映画にはまだ音声が伴っていなかったから、当時の映画館では、活動弁士(=カツベン)と呼ばれる語りのスペシャリストが、舞台袖で画面に併せて状況を説明したり、男女それぞれに声色を変えて台詞を語ったりして人気を博していた。
物語は、幼少時より活動写真(=映画)に魅せられた染谷俊太郎(成田凌)が、ひょんなことから警察に追われる身となり、もぐり込んだ先の映画館で偽活動弁士として働くうちに人気が出て……という具合に進んでいく。
そして、子供の頃に離れ離れになった幼馴染の栗原梅子(黒島結菜)が、女優となった姿で現れて再会を果たしたり、当時の実在の映画監督・二川文太郎(池松壮亮)と出会ったり、映画ファンがニンマリするような展開で楽しませてくれる。
面白いのは、ライバル館の嫌がらせで上映用のフィルムをずたずたに切り刻まれてしまった後、複数の映画のフィルムを繋ぎ合わせて、得意のカツベンの語りで物語を仕立ててしまうシーン。
繋ぎ合わせたのは邦画の『金色夜叉』とか洋画の『椿姫』のように何の共通点もないものだが、イマジネーションさえあれば物語を紡ぎ出すことができるという、まさに映画館という場でしか起こり得ないマジックだった。