映画館は、まだ見ぬ未知の世界への扉
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)Nuovo Cinema Paradiso 上映時間:2時間35分/イタリア・フランス
新作ドキュメンタリー『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(2021)が注目を集めているジュゼッペ・トルナトーレ監督の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)もまた、映画館愛に溢れる作品だった。
アカデミー外国語映画賞を受賞し世界中でヒット。特に日本では、観客席数約200のシネスイッチ銀座での単館ロードショーだったものの、前代未聞の40週間ロングランで27万人を動員。単館で3億6900万円の興行成績を残すという記録を打ち建てた。
物語の舞台は、戦後間もない頃のイタリア・シチリア島の小さな村。映画に魅了されて映写室に入り浸るようになった少年サルヴァトーレと、中年映写技師アルフレードとの友情を描いている。
サルヴァトーレは火事が原因で失明した映写技師の後を継ぐものの、やがて青年となり大都会のローマへと出て行き、映画監督として成功を掴んでいく。その裏には、もっと広い世界へ出て羽ばたいてほしいと願っていた、年老いたアルフレードの想いがあった。
久しぶりに村に戻ったサルヴァトーレが、アルフレードが遺したフィルムを映写機にかけて見るラストシーンは、涙腺が崩壊すること確実。
そのくだりは、映画がフィルムで撮られていて、映写機にかけて見るという昔ながらの鑑賞方法だからこそ可能なシーン。映画館の暗闇に映し出される魔法が、まだ見ぬ未知なる世界への扉となっていること、そして人の魂を揺さぶる力を持つことを、この作品ほど雄弁に物語っている映画はない。