そもそも「2025年問題」は本当に起こるのか

こうした世代間の対立は避けられないのだろうか。このまま「2025年問題」が起こり、現役世代は押し潰されるのだろうか。

代表を務める「人生100年時代 未来ビジョン研究所」で大人向けマーケティングの研究開発を続けてきた阪本氏は、別のシナリオがあり得ると提言する。そのカギは、独自の調査を重ねるなかで見えてきた「新しい大人」の存在にある。

「例えば、私たちが独自で実施した『理想の大人像』に関する調査では、『既成概念に捉われない柔軟な考えを持った大人でありたい』89.7%、『いつまでも若々しい大人でありたい』85.6%など、70代が全年代中で最も高い割合を示しています。こうした項目でここまでの高い割合を示すという傾向は、従来の高齢者には全くあり得なかった結果です。かつて『新しい若者』を作り上げた団塊の世代が『新しい大人』を作り上げようとしているわけです」

少年期、青年期、壮年期と新たな文化やライフスタイルを開拓し、根付かせてきた団塊の世代。高齢期においても、先行世代と異なる存在であっても不思議ではない。

では、こうした団塊世代によって「2025年問題」が実際に起こるのか。これに関しても未来ビジョン研究所では興味深い調査結果が出ている。

このまま団塊の世代が「2025年問題」を起こし、現役世代は押し潰されるのか?乗り越えるカギは「クロスジェネレーション」にあり_2
出典:人生100年時代 未来ビジョン研究所調査(2022年3月)

「団塊の世代が『介護予防行動』をしているのです。介護予防は一般の生活者にとっては比較的新しい考え方です。現在の75歳以上、とりわけ80歳以上では、そういう考え方はなく、漠然とした健康不安のなかで75歳以上となり、転倒などの要因によって要介護になりました。

しかしながら団塊の世代に介護予防行動について聞いたところ、『新聞や本をよく読む』などの認知症予防や、『適度な運動』『散歩』などの身体介護予防など、何らかの予防行動を実際に行っているという割合が、団塊世代の70代で91%にも上りました。

そもそも『2025年問題』は、“団塊の世代が上の世代と同じ割合で要介護になる”という前提で計算すると、社会保障費が膨大になって財政が破綻しかねないと、行政やメディアによって力説されたものです。

しかしながら当の団塊世代はすでに介護予防行動を起こしています。9割が具体的にアクションしているということは、行政やメディアがいう『2025年問題』のようにはならない可能性もあるということです。

そして介護予防行動は、ジム、ヨガ、ウォーキング、ランニングに関する商品・サービスや、サプリメント、医薬品などの『消費』になります。つまり、ここで、『社会保障費の受益者』から『消費者』への転換が起こるわけです。コロナの第8派もピークアウトし、5類になったこれからが、消費者としての活躍が期待されるところといえます。」

実際、団塊の世代は健康以外の消費意欲も旺盛であり、「ポストコロナには旅行に出かけるなどの消費をしようと思うか」という調査では、全世代中で最も多く84.7%が「消費をしたい」と回答している。

こうした、いつまでも若々しく輝いていたい「新しい大人」は、社会保障の恩恵に預かる「受益者」ではなく、経済の活性化を促す「消費者」としてのポテンシャルを秘めていると阪本氏は話す。

「消費意欲の旺盛な『新しい大人』は経済の活力源にもなり得ます。現在、日本の金融資産は2000兆円を超えるといわれますが、その8割以上は50代以上が保有しています。その人たちが健康を保ちながら消費に前向きになれば、現役世代の“雇用”やいま話題の“給与増”を生み出すことに繋がるでしょう。
もちろん要介護者をゼロにすることはできませんが、『2025年問題』が想定する最悪のシナリオを避けることは可能なはずです」