「男を喜ばせる技術」より大切なこと
そんな生活の中で転機が訪れる。コンパニオンとして働く中で、出会った貿易業を営む企業の経営者に「愛人になってほしい」と誘われたことがあった。
「その方には2年ほど生活から家まで全て面倒を見ていただきました。都内のマンションの一室を与えられ、子供と共に住んでいました。ある時、同じマンションに住んでいた高級ソープランドの社長にスカウトされたんです。私もちょうど自分で稼いだお金で自由に暮らしたいと思い始めた頃だったので、躊躇することなく決めました」
30年前の高級ソープ店の新人研修は言葉遣いから所作までかなり厳しいものだったという。客を取る前に1週間の研修期間を設け、接客からマットプレイを頭と体に叩き込んだ。
「男性客をご案内してから迎え入れるまでのきめ細やかな接客態度はもちろんのこと、ボディ洗いにマットの使い方からローションの作り方、マット上での体位など…ソープの仕事はやることが多すぎて、とても一週間で全てを身につけられるものではありません。
私にとっては男を喜ばせる技術を身につけたというよりも、真心込めて人に尽くすことの真意やその大事さを学んだ場でもありました」
1年、2年と経験を積んでからも、自ら銀座のママに講習料を払って接客指導を受けに行くなどの努力も怠らなかった。そして20代後半頃には現役ソープ嬢から講習依頼を受けるようになり、その評判が広がり、現役嬢として働きながら講習師としても名を馳せるように。
「意外と多かったのが、お客様がご自身の奥様を連れてきて“マット体験をさせてくれ”という特殊なご依頼(笑)。旦那さんのソープ遊びが奥様にバレて“そんなに楽しい所なら私も連れてって”といってご夫婦揃っていらっしゃるケースが何回かありました。
私は奥様からも気に入られることが多く、後日、奥様から単独でご予約いただくことも。さすがに同日に旦那様からもご予約が入った時は気まずかったですけど(笑)」