男性同士ならではのリアルなセックスシーン

宮沢氷魚にベッドシーンの“振り付け”をし、鈴木亮平にゲイの所作を指導…映画『エゴイスト』が日本映画で初めて導入した画期的な仕事とは_5
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

──Seigoさんは具体的にどのようなアドバイスをされたのでしょう?

Seigo まずは龍太が「売り」をするシーンです。普通のホテルの宿泊客は、自分の部屋を目指して歩いていくと思うんです。でも売りをしている人がホテルに行くときは、自分が泊まっているわけではないのでお部屋を探さなければいけません。探しながら歩いていき、お部屋に入る前には、周りに人がいないかをちょっと確認してノックをする。そういう細かな仕草をお伝えしました。

口臭ケアのためにガムを噛んでいたり、同業の人間が見たら「あ!」と思うような、細かい部分までアドバイスさせてもらいました。

──セックスシーンの動きも振り付けされたんですよね?

Seigo はい。これまで僕もいろんな同性愛をテーマにした作品を見てきましたけど、ちょっと当事者からすると嘘っぽく見えちゃう場面が多くて。しょうがないことかもしれないけれど、今回は監督からリアリティを持たせたいというリクエストをもらったので、どういう動きをしたらよりリアルに見えるかを話し合いました。

僕がお客さん役として紹介したふたりに協力してもらい、男同士でどういう行為が行われるのか、撮影前に5〜10分かけてリハーサルをして、カメラマンさんやスタッフさんを含めて動きを見てもらったりもしました。

例えば正常位の場合、腰の下に枕を入れてあげたりするんですね。

ミヤタ廉 つまり、女性との挿入する位置の違いですよね。「こういう位置になるから、こういう腰のふり方になるんです」というような、本当に“振り付け”をするんです。殺陣やダンスと同じように伝える。なので最初からその動きができなくてもいいんです。

特に氷魚くんはインティマシー・シーンが多かったので、Seigoが常に近くにいる形で、細かくコミュニケーションを取りながら進めていきました。

──劇中では、浩輔が龍太について「セックスが丁寧すぎる。もっとがっついてほしい」と友人にグチる場面も。その“丁寧さ”は、セックスワーカーとしての気の使い方ということでしょうか?

Seigo そうですね。ぱっと見ではわからないかもしれませんが、触り方や体勢や舐め方など、実際にはすごい違いがあるんです。その違いを浩輔に気づかせるために、シャワーを浴びた後にタオルでポンポンと拭いてあげたり、自然に頭を触ったり。「どうしてそこまでやるんだろう」という、“優しい”のちょっと先にあるものを散りばめていきました。

──その違いを的確に指示できるSeigoさんもすごいです。

Seigo 僕も実際、売りをやっていた側なので、自由恋愛をしたときにすごく気を使っちゃうんです。「今、喜んでくれているかな」みたいに。これは仕事として経験した人にしかわからないし、多分、一生抜けないと思います(笑)。同じような感覚が、龍太の中にも潜んでいて。

監督からは、「人に言えない仕事ではあるけれど、お金を得るために真摯に取り組んでいるスタイルで」とお願いされていたので、僕が実際に喜んでもらえた行為を、氷魚くんにも伝えていきました。