他党との候補者調整、天皇制廃止「しません」…「たしかな野党」の変節
異例とも言える、党員からの異論に動揺が広がる党内。ただ、ここ数年の共産党は、主張の方針転換や党勢低迷で、足元がぐらつき、党員に不満がたまっていたのも事実だ。
民主党が飛躍した2000年代に「たしかな野党」を標榜し、他の野党とも一線を画す戦略をとっていた共産党の立場は、ここ数年で大きく転換した。きっかけは2015年、安倍政権が成立させた安全保障法制をきっかけに生まれた「野党共闘」だ。
翌年の参院選で共産党は、32ある一人区のほとんどで候補者を取り下げ、民進党の候補者の当選を最優先するようになった。
全国紙政治部記者が解説する。
「民進党にとっては、共産が候補者を取り下げてくれれば、与野党の1対1の構図に持ち込むことができ、戦いやすくなります」
一方の共産党はというと、
「党勢が右肩下がりになる中、あらゆる選挙区への擁立は、資金面でも厳しくなっていたところ。候補者を取り下げる口実になった『野党共闘』は、共産党にとっても渡りに船でした。
安倍政権がタカ派的政策をとってきたから、共闘が実現したとも言え、志位氏が当時の安倍総理にたまたま出くわしたとき、『安倍さんのおかげで共産党はやっていけます。ありがとう』とお礼を言ったこともあるそうです」
こうして野党間の思惑が一致して実現した候補者調整の結果、2016年の参院選では32選挙区中11選挙区で野党系候補が議席を獲得。2013年の参院選では31選挙区中29選挙区で自公候補の勝利を許していたことを考えれば、大健闘だった。その後の衆院選、参院選でも、野党間の候補者調整は恒例となっていった。
「たしかな野党」から共闘路線に舵を切った共産党。その路線は、発信する政策も、野党第一党の立憲にすり寄ったものへと変えていった。
「安保条約や自衛隊など、他の野党と意見の違う問題を政権には持ち込みません」「与党になったら天皇制は廃止? そんなことは絶対にしません」――そんなリーフレットまで作成し、立憲などとの「野党連合政権」の樹立を目指すようになった。