「走ることで精神的に救われた」

ステージ3の大腸癌を乗り越え、翌年にはフルマラソンを完走。プロランニングコーチが明かす「年齢を重ねても走り続けるコツ」_2
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――病気になったあとは食事内容を始めとしてライフスタイルは変えましたか?

病気になるまで何年間かは、ベッドでパソコン仕事をしたり、缶酎ハイを飲んだりを毎日のように続けていました。それによって、いつもお腹が冷えている状態だったと思い、これがよくなかったかと。まず、こうした悪い生活習慣を改め、とにかくお腹を冷やさないことを心がけるようになりました。

お酒は今も飲みますが、寝る前に飲むことはやめています。お茶やコーヒーはカフェインが入っているので避け、寝る前に白湯を飲むこともあります。食生活に関しては、病気になってから野菜を食べる量が増えました。

――手術後はどのようなタイミングで走ることを再開しましたか?

術後5年を経過するまでは不安な気持ちが残っていました。しばらくは再発を心配していましたが、あえて抗がん剤は使用しなかったです。

術後半年くらいからある程度走れるようになったものの、最初は1kmを7分30秒で10分くらいが精いっぱい。自分でも「脚が細くなったなあ……」と思っていました。

病気が病気なだけに、ついつい生死のことばかり考えてしまうときもありましたが、走っている間はそのことを忘れられる。走り終わったときにはちょっとした達成感を得られましたし、脚が痛かったり、疲れを感じることが、生きているということの証しだと思えて、嬉しかったですね。

この当時、走ることで精神的な部分はかなり救われました。

最初にレースに復帰したのは2007年1月の館山若潮マラソン。それまで参加していたフルマラソンの部ではなく10kmの部をゲストランナーとして走りました。 10kmという距離が本当に長く感じ、術部やその周囲は時々痛みましたが、ゲストとして招待された立場だから辛い顔もできません。大腸がんのことを公表したのは、発見の3年後なので、そのときは病気のことは誰も知らなかったですし。

それからも走ることを続け、病気発見の11か月後の2007年7月に開催されたゴールドコーストマラソンで、フルマラソンを完走。さらに2009年11月のつくばマラソンではサブ3(3時間を切る)を達成するくらい走れるようになりました。

「フルマラソンでサブ3を達成したら周囲も心配しないだろう」という思いはありました。