――そもそも、氏家さんが創作を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

大学生の時に、とあるジャンルの作品にハマって、二次創作で小説を書いたことが最初のきっかけです。同人誌を作ったり、個人サイトで発表したり、当時はかなりハマりましたし、そこで、自分が「書くこと」が好きだということに気がつきました。

オリジナル作品を書き始めたのは、今から2~3年前です。二次創作には随分長い間打ち込みましたが、やはり人が創ったキャラクターを借りているので、自分の中で創作の幅に縛りがあって。それを取っ払って書きたい、と思ったことが、オリジナル作品を書き始めたきっかけでした。

――では、プロデビューを意識するようになったのは?

二次創作に打ち込んでいた頃、そのつながりで交流していた友人の中にプロの漫画家さんがいらっしゃったんです。

それまで自分の中では、プロのクリエイターって、並の人とは全然違う才能の持ち主で、自分とは全く違う世界にいる人だと思っていたんですが、実はそうではなく、普通の人が一生懸命努力して創作しているんだと、彼女との交流を通して理解しました。

「もしかしたら、自分が『プロになりたい』と考えてもいいのかもしれない」と意識したのは、それがきっかけだったような気がします。

そして、私がオリジナルの創作を始めてから、知人の一人が「小説家になろう」からプロデビューされたんです。その話を聞いた時、率直に「いいな、羨ましいな」と思った。そして「羨ましいと思っている自分は、プロになりたいんだ」と気づいて、だったらやってみようと。それで公募への投稿を始めました。

――今はネットでの創作活動からデビューするケースも増えていますが、あえてオーソドックスな「公募」という形を選んだのはなぜですか?

知人もWEBからのデビューでしたし、そういうケースは増えていますよね。これは個人的な感覚なのですが、WEBで発表される作品はキャッチーさが重要視されていて、短いスパンで引きを作ることで、読者に毎回読み続けてもらえるよう意識した構成になっていると思います。

でも私が書く作品は、短く区切ってサッと読んで楽しんでもらえるタイプではないな……と。

それから、WEBでの発表はリアルタイムで読者からの感想をもらえることがメリットだと思うのですが、私の場合は逆に、人の意見が気になりすぎてうまく書けなくなってしまうリスクの方が大きいなとも感じました。それで、じっくり創作に取り組める公募を目指すことにしたんです。

――数多ある文学賞の中で、集英社ノベル大賞を選んだ決め手はなんだったのでしょうか?

ノベル大賞に応募したのは、自分がコバルト文庫・オレンジ文庫が好きで、一度「少女小説」を書いてみたいと思っていたからです。

応募作の『双蛇に嫁す』は、「現代の少女小説」をイメージして書きました。喜咲冬子先生の『青の女公』(オレンジ文庫刊)が好きで、自分も壮大な大河ファンタジーを書きたいと思ったのもきっかけのひとつです。

――公募に挑戦している間、どうやって執筆のモチベーションを維持しましたか?

公募に挑戦する前の二次創作時代は、作品を発表すれば仲間からダイレクトに感想をもらえる環境でしたし、嬉しい感想もたくさんいただきました。でもオリジナルに移ってからはそんなに甘くなく、初めの頃は作品をWEBで公開していたのですが、二次創作と比べると全然反応がなかった。だからこそ、私は公募への挑戦を選んだのだと思います。

公募に応募すれば、私のことを全然知らない、小説を読み慣れている人に絶対に一度は読んでもらえますし、作品に対して忖度のない客観的な評価がもらえる。公募に挑戦するようになってからは、感想や反応はなくても、「何次選考を通った」という結果を自分のモチベーションに繋げていましたね。