「弱い自分」を受け入れる

メディア取材時の記者さんや周りの人間から、僕はよくこう言われる。

「姫野さん、本当にポジティブですよね」
「いつも笑顔だし、明るいですよね」

たしかにそういう面はある。「無理」「できない」「ダメ」……といったネガティブなことは意識して言わないようにしているし、誰かを責めたり妬んだり羨んだりする感情も、極力、抱かないように意識しているからかもしれない。

ラグビー日本代表主将が吐露する自分の「弱さ」。自身の弱さと向き合うための「姫野ノート」に書かれた3つのこと_1
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僕は子どもの頃から、駄菓子屋やコンビニのクジがバンバン当たるくらいにはクジ運が良いのだけれど、それも、「オレ、運がいいから」と思い込んでいることが当たりを呼び込んでいる気もする。そういう明るさは持っているのかもしれない。だが、本当の僕は、めちゃくちゃに弱い人間だ。

ここまで「自分にフォーカスしろ」「目の前に全力を尽くせ」と書いてきたが、本当の僕はとにかく心配性で、「どうしよう」と不安ばかりで、「あの時こうすれば良かった」と振り返って後悔ばかりしている。

そして、怖がりだ。

タックルに行くのは今でも怖い。僕より強くて大きい外国人選手と対戦する時は、正直、いつもこう思ってしまう。

「次の対戦相手は南アフリカか……怖いなぁ……」
「オレの〝トイメン〟はアイツかよ……ヤバイなぁ、めっちゃ怖いなぁ……」

ラグビー日本代表主将が吐露する自分の「弱さ」。自身の弱さと向き合うための「姫野ノート」に書かれた3つのこと_2

毎日毎試合、恐怖心と戦っている。
自分の欲望に負けてしまう〝欲深さ〟も僕の弱さだ。

「遊びたいな」「飲みに行きたいな」「これやったらアカンよなぁ……」ということを、どうしても我慢できない。つい最近も欲に負けてビールを飲んでしまった。「シーズン中は禁酒する」と、自分の中で決めたはずなのに。

人に優しくできなかったこともあった。

外出先の道端で、何か困っていそうな人を見かけたのに声をかけることができずにスルーしてしまった。「困っていそうだな」と気づいていたのに、先を急いでいた自分の都合を優先してしまった。

スルーといえば、この間は落ちているゴミも拾わなかった。

街中、人混みの中で、腰をかがめて落ちているティッシュを拾うのに躊躇してしまったのだ。「あれはちょっとさすがに衛生的に……」と言い訳をして拾わなかった。

こんなふうにいつも、できない言い訳、やらなかった理由を探している。