選手との会話は起用法で行う

おれの考え方は「選手との会話は言葉ではなく、選手に対する起用法で行う」というもの。ああだこうだと言葉で言うより、その選手に求めるものは使い方で伝わると思うとる。

2023年を例にとると分かりやすい。打順も守備位置も固定した。一番センターに固定した近本。①外野守備の要になれ、②安打数ではなく出塁率にこだわれ、③盗塁はジスボール(次の球)のサインで出す、④走者を置いた打席では好きに打て──などのメッセージが込められている。

近本は野球に対する理解が早い。足の速い左の一番打者なら、相手投手によっては、内野安打を狙うという方法がある。野球界でいうところの「走り打ち」だ。打席で体を開いて、スタートを切りながらバットに当てる。とてもクリーンヒットが打てそうにない出来の投手が相手のときに、ボテボテの左方向への内野ゴロで安打にする。

キャンプの早い段階で、近本を含む何人かでそんな練習をして、一塁までのタイムを計った。結果からいうと近本は速くなかった。振り切るタイプのスイングだから、スタートが切れない。

無理に「走り打ち」を求めるより、好きにスイングしたほうがいい結果につながる。そういう一番打者もいる。キャンプで確認することで、使う監督も、使われる選手も納得してチームとしての方向性を確認する。

それが監督と選手の会話やと、おれは思っている。

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連覇についての思いを語る岡田監督 写真/共同通信
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二番中野は遊撃から二塁にコンバートした。肩が強いほうではない。その結果2022年は遊撃の守備位置が前になっていた。グラウンドの中では分からない。ネット裏上段の記者席だからこそ俯瞰して見えた、評論家・岡田の目ということやな。もともと守備力はある。東北福祉大では二塁が本職やった。そんなん誰も知らんのやからなあ。

二塁やったら送球を気にせんですむから、守備範囲も広くなる。余裕を持てば一流の二塁手になれる。ゴールデン・グラブ賞の常連だった名手、広島・菊池を上回る日本一の二塁手が誕生した。
「思い切った中野の二塁コンバートが、優勝への大胆采配」とかいう声もあるけど、そんなんおれにしたら当たり前のことやん。中野を二塁で使うって普通の采配やんか。