【閲覧注意?】食用コオロギ工場に潜入! 工場内にたちこめる香りはおなじみのあの…?「コオロギの危険性」「多額の補助金の真実」についても社長に直撃
無印良品の「コオロギせんべい」が火付け役となり、日本でも徐々にコオロギを使用したお菓子が浸透しつつある。前編では日本で初めてコオロギを原材料としたお菓子を量産したメーカーと言われている株式会社MNH取締役社長・小澤尚弘氏にコオロギ食についてのインタビューをおこなった。後編では同社の工場で、コオロギスナックやコオロギせんべいなどの商品が作られる工程を取材する。
工場に漂う鰹節に似た匂いはコオロギの香り
株式会社MNHのオフィスビル1階にコオロギ食の加工工場がある。前編で同社取締役社長の小澤尚弘氏が「工場というよりは工房に近い」と語っていたとおり、たしかに一見すると工房のような印象だ。

工場への入口
白を基調とした室内は工場のようにパイプや配管が張り巡らされてるというわけではなく、作業台と流し台、それから撮影はNGだったがコオロギに味付けするための器具などがすっきりと並んでいた。
工場の従業員が語る。
「こちらの工場では常時5名が作業しており、コオロギ粉末をパフにして味付けをした『未来コオロギスナック』やコオロギ粉末を配合した『スーパーコオロギおつまみせんべい』、乾燥コオロギに味付けをする『未来コオロギオツマミ』など様々なコオロギのお菓子の加工を行っています。商品によってまちまちですが、それぞれ1日2000~20000袋ほど生産します」
工場の従業員は大量のコオロギを金ダライに盛って味付けをして袋詰めしているところだったが、ほんのり鰹節に似た匂いが漂っていた。
「それはコオロギの匂いですね。粉末状のコオロギはもうちょっと魚粉っぽい匂いがします。撮影はできないのですが、こちらは色々な国から仕入れたコオロギを保管している部屋です。養殖してる国によってコオロギの大きさも違うのですが、今使ってるコオロギは大きいサイズのコオロギですね」(前出、従業員)

サイズは2cm程度
通された部屋には大量のコオロギやコオロギパウダーが段ボールに入って棚につまれているためか、さらに匂いは強くなる。従業員が続ける。
「このように金ダライにコオロギを出してシーズニングしたり、専用の器具を使って甘辛醤油でコオロギを煮込んだりして味付けをしています。味付けを行う器具は公表できませんが、こうして製品になっています」
「食品安全委員会がコオロギ食の危険性を指摘した」はデマ
ひと通り作業を見せてもらい、記者が工場を後にすると「どうでしたか?」と小澤尚弘氏が笑顔で出迎えてくれた。商品を作るうえで特にこだわっていることを尋ねると「パッケージに必ずコオロギとカタカナで書くこと」と答える。
「英語でコオロギという意味の“クリケット”にしてぼかしたり、名前を隠した方がいいという意見もありますが、あえて弊社はコオロギと表示しています。やっぱりちゃんとコオロギと認識して受けいれてほしい気持ちがあるからです」(小澤氏)

作業する工場の従業員
一方で、コオロギ食の安全面についてはどのように考えているのだろうか。
「危険だという人たちが何のエビデンスに基づいて言っているのかがわかりません」と小澤氏は話すが、2018年8月、欧州食品安全機関(EFSA)が新食品としてのヨーロッパイエコオロギのリスクプロファイルを公表。
その中で「総計して、好気性細菌数が高い」などといった懸念事項が並べられており、翌月、内閣府の食品安全委員会もこの文書を紹介していた。このことから「コオロギ食の危険性を食品安全委員会が指摘した」との情報もSNSで拡散されているが……。
「あれは欧州連合(EU)の専門機関EFSAの文書を紹介しているだけで、内閣府食品安全委員会が言っているわけではないんです。
内容に関しても、食品全般に言えること。例えば肉や魚をなんでも生で食べたりはしませんよね。それは細菌が多いからです。だから昆虫食もそれと同じことですし、コオロギだけが危ないのではなく、食品全般が適切な調理をしなきゃ危険性があるということ。コオロギは国連食糧農業機関(FAO)も推奨している食品です」(小澤氏)
NTT東日本もコオロギ食に参入。その狙いは?
コオロギ食を扱う企業はこの事業によって補助金や助成金をもらっていると非難する声も上がっているが、その噂について小澤氏は一笑する。
「補助金は一銭もありません。政府に聞いていただければすぐにわかります。
直近だとNTT東日本さんが食用コオロギの養殖事業に参入を発表したりと、コオロギ食事業を展開する企業が増えていますが、補助金やイメージアップが目的ではないでしょう。
新規参入を考えている企業は何か産業構造を変えなきゃならないという思いがあるはず。そこで、次の成長産業への投資の中のひとつに、コオロギの養殖事業が入っているんだと思いますよ」
ネット上では昆虫食やコオロギ食の是非に関する論争が過熱している。
「極端な意見が多い印象はあります。20、30年後に昆虫食やコオロギが主食になるという話をしているわけではなく、豚肉も牛肉も変わらず食べていると思います。しかし、人口増加や食糧不足でそれらが高価になっていたら、他でタンパク質をとらなければならない。
成人男性の一日に必要なたんぱく質の推奨量は60g、女性は50gと言われています。きたるべき食糧危機に備えてできることを提案しているだけなのです」
普及に向けての今後の課題はどこにあるのか。

「弊社はお菓子とかおつまみとかの分野でこれまで製品づくりをしてきましたが、あくまで“食事”ではなく“間食”という位置づけ。ですので、今後はご飯とか味噌汁と一緒に並べるような、食卓に上がれるような製品づくりが必要になるだろうと考えています。
コオロギ食は山で言うとようやく2合目を登り始めた程度。これから次第では、食卓で市民権を得ることだってできると信じています」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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