【閲覧注意?】食用コオロギ工場に潜入! メーカー社長が語る未来の食糧「タピオカブームと違って将来必要とされる」再来年には市場規模1000億円とも
3月に徳島県立小松島西高校が行った「コオロギ給食」が報じられて以来、コオロギを始めとした昆虫食の是非についての論争が過熱し続けているが、実際にコオロギ食はどのように製造され流通しているのか。日本で初めてコオロギ食のお菓子を量産したメーカーと言われている株式会社MNH(東京都調布市)の「コオロギお菓子工場」を訪ねてみた。
いずれは食肉よりも昆虫食が身近に…?
「コオロギ食についてのご理解をどうか深めていただきたく、ご連絡いたしました」
コオロギ食論争が加熱するなか、このようなメールが集英社オンライン編集部に届いた。話を聞くべく記者が向かったのは東京都調布市にあるオフィスビル。2016年から食用コオロギを使ったお菓子やおつまみなどを開発している株式会社MNHだ。
取締役社長の小澤尚弘氏が語る。
「弊社はもともとお菓子メーカーではなく、地域貢献できるソーシャルビジネスモデルを作ろうとスタートした会社ですが、コオロギ食のお菓子の量産を始めたのは弊社がどこよりも早いと思います。これまで地域貢献として引きこもり経験者や福祉施設利用者を積極的に雇用してきており、その方たちの働く場所として始めたのがお菓子づくり工場でした。工場というよりは工房の雰囲気に近いかもしれませんね」

株式会社MNH取締役社長・小澤尚弘氏
雇用を創出することを目的に始めたお菓子工場は、工場の流れる工程速度に人が合わせるのではなく、働く人たちの速度に工場が合わせていくのが運営方針だという。その方針があったからこそコオロギ食へ参入していった。
「当然ですが、このやり方は非効率的。そうなるとどの企業も手を出していなくて高付加価値、かつ大手が参入しづらい分野でやっていかざるを得ないんです。
万が一コオロギと関係ないところで事故が起きたとしてもコオロギのせいだとなる可能性を想定すると大手は手が出しづらいのです。弊社としてはコオロギ食はタピオカなどの一時的なブームとは違って今後も世界で必要とされていく流れがあると感じています」(小沢氏、以下同)
世界的な人口増加や食糧問題という背景から、「コオロギ食」という分野は今後も伸びると小澤氏はみている。

食用コオロギ
「世界で色々な昆虫食がありますが、最も養殖されているもののひとつがコオロギ。今はまだ需要と供給のバランスが取れず、コストも高いのでコオロギ食は割高になっていますが、本来、生産効率はいいんです。
このまま食糧問題が進めば、今後、豚肉や牛肉の価格が高騰してコオロギの価格が安くなることもあり得る。現に豚肉や牛肉は今どんどん高くなっていますよね」
2年後には昆虫食の世界市場規模は1000億円とも
MNHが展開するコオロギのお菓子やおつまみなどは販売開始から年々市場が広がり、当初と比べると売上はおよそ6倍になったという。
「きっかけは2020年5月に無印良品さんがグリラスさんと共同開発して発売した『コオロギせんべい』でした。それまでは『コオロギは棚に並べられない』と見向きもしてくれないお店が多かったのですが、あれを機に『コオロギって売ってもいいんだ』という発想になったお店が多かったと思います。
ただ、驚くほど利益が出るようになったというわけではなく、ようやく採算がとれるようになった程度です」
日本能率協会総合研究所によると、コオロギを含めた昆虫食の世界市場規模は2019年度の70億円から、25年度には1000億円に上ると予測する。

粉末状にしたコオロギも
欧米はそのあたりの意識が早くも浸透しており、地域によってはコンビニにコオロギのお菓子が並んでいたり、スムージーやハンバーグなどにコオロギの粉末をふりかけてたんぱく源とする人たちが増えているらしい。一方、日本はというと……。
「コオロギが食品に混ざるとまだまだ異物混入だと大騒ぎになりますよね。市場規模が数十億円といわれても、肌感としてピンとこないのはそういう固定観念のせいだと思います。
1回食べてしまうとなんてことないんですけどね。もちろん食べたくない方が無理して食べる必要はないと思っていますが。
弊社ではタイやベトナム、カナダなど世界各国のコオロギを食べ比べて、中でもおいしいコオロギを使っています」
記者が実際にコオロギを食べてみた
そう言うと、小澤氏はおもむろに銀色の袋を開け、小皿にコオロギを並べた。乾燥したコオロギに味付けをした「未来コオロギオツマミ」(ワサビ味)という商品だ。
「よかったらどうぞ」とうながされ、一瞬躊躇したが百聞は一見に如かずと恐る恐る口に入れてみる。サクサクとした触感とワサビの風味がマッチしていて思いのほかおいしい。味や触感は桜エビに近い。
「香ばしくておいしいでしょ? 弊社が他の昆虫ではなくコオロギを扱う理由のひとつにはこの“おいしい”があるんです。
食用でもミルワームとかタガメとかとは全然違います。ミルワームもタガメも視覚的にも触感的にもわざわざ食べたいとは僕も思いません。特にタガメの本体は固いので内臓を食べるわけですが、食感もよくありません。
コオロギはご飯にふりかけてもおいしいし、お酒にも合いますよ」
小澤氏の言うとおり、たしかに実際に口にしてみると、味や触感は想像していたものとは違った。

そのままの状態で食べるのが一番おいしい
「コオロギは粉末にしたり、エキスにせずにそのまま食べるのが一番おいしい食べ方。弊社にも粉末や混ぜ込んだ商品はありますが、なるべくそのままのコオロギで食べてもらえるよう、これからもいろいろと商品開発をしていきたいです」
後編ではオフィスビル内にある「コオロギお菓子工場」でコオロギを加工する工程をレポートするとともに、SNS上で噂される「コオロギの危険性」や「食用コオロギ事業への多額の補助金」などについても、小澤氏にぶつけてみた。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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