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一般の大学等とは大きく異なる「防衛大学校」という存在

筆者は防衛大学校と深い交流を持つ者ではなく、自衛隊や外国の軍隊を専門的な研究対象とする者でもない。そのため、本稿で述べる内容は徹頭徹尾、一般論にとどまることを、あらかじめ承知いただきたい。

石原俊教授 撮影/高木陽春
石原俊教授 撮影/高木陽春
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防衛大学校(以下、防大)は、国際的にみれば各国の士官学校に比肩する教育機関であり、学校教育法第1条が定める「1条校」ではない。

この点で防大は、一般の大学等とは大きく異なる。

等松春夫教授による告発文書「危機に瀕する防衛大学校の教育」は、高等教育機関として特殊な組織である防大が、教育体制・事務体制から、教官人事・指導官人事、ガバナンスにいたるまで、重大な問題を長年にわたって放置してきた結果、学生の教育環境が危機的状況に陥っていると指摘する。

特に、学生舎(寮)における共同生活や、上級生から下級生への「指導」の慣習が、公私混同の命令や悪質な威圧の温床となり、ハラスメント、いじめ、賭博、詐欺などが蔓延する要因になってきたと告発している。

これまでも、防大生をめぐる不祥事が起こると事実関係が報道されることはあった。だが、そうした不祥事が頻発する構造的背景を、一般社会に向けて体系的かつ説得的に説明したのは、おそらく等松教授が初めてだろう。

等松教授の告発に対して、防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した【※】

久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張している。

ただ、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある。