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中国・台湾・アメリカ・日本の軍事能力など様々な情報を基に分析を行い、もっとも可能性があると思われるシナリオに基づいて中国軍の台湾進行及び日本への波及、アメリカの参戦などのシミュレーションを行った。展開しているシナリオは、本書(第1部)で触れた図上演習の成果(日本政府の対応)を反映している。『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』より

【Xデーマイナス10日~7日①】

( 台湾 )
反政府活動は全土に広がっていた。台湾当局の厳しい取り締まりにもかかわらず、過激派による公共機関へのゲリラ攻撃が続いていた。

数日以内に中国軍の侵攻作戦が開始される可能性があるとして、台湾軍は全軍に非常警戒態勢を命じた。沿岸部では防御陣地の構築と機雷の敷設などが行われ、予備役に動員令が出された。

台湾海軍は、駆逐艦及びフリゲート艦を南北海域の領海線付近に配置した。馬祖島、金門島、東引島守備隊には戦闘命令が下令された。

台北市、台中市、台南市、高雄市などでは国外に逃れようとする市民が飛行場や港に殺到しパニック状態となっていた。市民の一部は漁船や小型船舶などを奪い、日本やフィリピンに向けて出港しようとして漁民などと衝突する事件が多発した。
  
( 東京 )
日本政府は台湾を危険度レベル4へ引き上げて、渡航中止及び在留邦人2万345人に退避勧告を行った。外務省は台湾政府と在留邦人の避難について協議を行い、防衛省に対して邦人輸送を要請した。

海上自衛隊は輸送艦2隻を台湾本島東部の花蓮市沖合に停泊させて邦人輸送の準備を開始した。

米豪海軍の輸送艦、病院船も花蓮市沖合に停泊し自国民の退避に向けた準備を行っている。

元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第3部】反政府活動で混乱する台湾、中国が夜中に重要施設を攻撃_1
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( 中国 )
中国国防部報道官は「台湾の治安情勢が極度に悪化しており、外国の干渉を防ぐために、明日0900(午前9時)から台湾周辺海域を海上封鎖する。台湾領空への航空機の進入を禁止する」と一方的に発表した。これに伴い、中国海軍艦艇が台湾海峡の南北海域に配置されて封鎖態勢に入っていた。

ただし台湾の東側である太平洋海域への艦艇派遣は行われていない。中国軍は、台湾本島から脱出する外国人が搭乗した民間機については、その飛行を妨害する動きを行っていない。
  
( 朝鮮半島・38度線 )
北朝鮮は、米韓合同演習への対抗措置としてミサイル発射実験を繰り返し行っていた。数日前には弾道ミサイルの発射実験を敢行し、日本列島の上空を通過して太平洋上に落下させた。北朝鮮外務省は、国営放送で「大規模な軍事演習の一環」と説明した。

在韓米軍及び韓国軍は警戒レベルを上げ、半島には緊張感がみなぎっていた。

38度線、軍事境界線東部戦線を担任する韓国陸軍第1野戦軍司令部(江原道原州市)に、軍事境界線の警備を担任する第2師団から緊急報告が入った。北朝鮮前方軍団の動きが活発化しており、非武装地帯に北朝鮮軍の多数の斥候が入っているという。
「3軍を動員した大規模演習と、アメリカを威嚇する弾道ミサイル発射実験……前方軍団の活発な活動。北が冒険を考えているなら大変なことになる」

第1軍団長の言葉に参謀が静かにうなずいた。