劣化させずに使うためポイント

電子機器は長く使っていると、徐々に電池容量が少なくなっていきます。
リチウムイオンバッテリーが劣化するのは、①主に通電したとき、②時間が経ったとき、③温度が高いときの3つです。

1つ目の「通電したとき」は、日常的に使ううえで基本的に避けようがありません。放電と充電を繰り返せば、その分バッテリーは劣化していきます。厳密にはバッテリーの仕様や、端末・充電器が備える制御機構によっても変わるところですが、リチウムイオンバッテリーを採用している最近のデバイスでは、「容量を使い切ってから充電したほうがよい」「中途半端な容量で充電するとバッテリーによくない」といったことは、基本的に考えなくてOK。神経質になりすぎず、好きなタイミングで充電しましょう。

ちなみに、「継ぎ足し充電がNG」なのは、リチウムイオンバッテリーが普及する以前に使われていた「ニッケル水素電池」で知られていた作法です。こちらは残量を使い切らずに充電すると、使える電池容量が少なくなる「メモリー効果」という現象がありました。

2つ目の「時間が経ったとき」も避けようがありませんが、ユーザーが使用方法を工夫することで、劣化を緩やかにすることはできます。たとえば、デバイスやバッテリーを長期間使用しない場合には、バッテリーを100%の状態で保存するのではなく、40~80%程度の容量にしてから保存しましょう。これで経時劣化を最小限に抑えられます。

3つ目の温度が高いときの劣化についても、ユーザーの工夫である程度避けられます。たとえば、充電しながらの操作は、バッテリーを傷める原因になりやすいとされています。スマートフォンで充電ケーブルを挿しながら、処理の重いゲームを長時間プレイしたりすると、バッテリーの最大容量が減るスピードが早まる可能性があるので、注意しましょう。ほかには、炎天下などの高温環境下などに放置したりするのもバッテリー劣化を早めるので、避けたほうがベターです。

また、ストーブの近くやこたつの中などの高温下で充電したり、炎天下の車内に放置したりすることは、発熱・発火などの原因になることがあるとされています。絶対にやめましょう。

ちなみに、氷点下など気温が極端に低いときにバッテリー性能が急に悪くなる現象もありますが、これは基本的に一過性のものです。

気温が戻れば、バッテリー性能も元に戻ります。ただし注意したいのは、気温が低い状態で無理にバッテリーを急速充電しようとすること。これはバッテリーを劣化させますので、避けてください。

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これだけは覚えておきたい3つのポイント(図は筆者作成)
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リチウムイオンバッテリーは、こうした複数の要因が組み合わさって徐々に劣化してくものです。たとえば、長期的に利用したいノートパソコンなどでは、現実的に、定期的にメーカーなどにバッテリーの交換を依頼することになるでしょう。

ただし、充電しながらの使用をなるべく控えたり(ポータブル使用にも対応した家庭用ゲーム機などでは難しいかもしれませんが…)、氷点下での急速充電を避けたり、ポータブル電源などを長期間放置するときには40~80%にしてから保存したりと、ユーザーが工夫できることも多々あります。

現代に必要不可欠な存在となったモバイルデバイス。長く快適に使い続けるためにも、リチウムイオンバッテリーの正しい知識を頭に入れておくとよいでしょう。


文・写真/井上晃