村本大輔インタビュー♯0、♯2、♯3を読む
「テレビから消えた芸人」ウーマン村本を追いかけた映画『アイアム ア コメディアン』が突きつける日本人の”生きづらさ”の正体
アメリカに行って解消された「日本のお笑い界への違和感」
現在、アメリカでスタンダップコメディアンとして活動するための準備を進めている村本。英会話もそのひとつだが、文化も風習も違う人々を、異国の言葉で笑わせることは並大抵のことではないはずだ。
――今、英語を勉強する頻度はどのくらいですか?
ドキュメンタリー映画監督のミキ・デザキって知ってる? 彼が俺の英語の先生。彼は日本国内外の社会問題に対してすごくいろんな考えを持っていて、『主戦場』という映画を撮ったんだけど、コメディーも大好きで、俺のことも追おうとしていたんだよね。
社会問題についての知識と語学力。その二つを持ってる先生ってなかなかいないから、彼との会話の中で新たなネタが生まれたりもする。
でもさ、一時間のプライベートレッスンでギャラが7500円なんだよ。ぼったくりじゃね? それでいて俺が勉強嫌い過ぎて逃げていたら「逃げるな!」って連絡が来たりします(笑)
勉強をするのはそんなときかな。
――村本さんはすでにアメリカやイギリスでもライブをやって来ていますが、スタンダップコメディと日本のお笑いの一番大きな違いは何でしょうか?
ずっと長い間抱いていた疑問があって……。
例えば日本で人気のある若手芸人がM-1グランプリなんかに出たとき、彼らのファンの人たちが「テレビにたくさん出て忙しいのに、漫才のネタまで作ってすごい!」とか言うけれども、「本職どっちやねん」って俺は思うね。
「漫才のネタをたくさん作るのに、テレビにも出てすごい」だったらわかるけど。逆やん。
テレビで披露する漫才って、お茶の間で一体誰が笑っているのかすらわからず、笑わせているという実感が持てない。そこにずっと違和感を持っていたんだけど、アメリカに行って解消された。
ケヴィン・ハートっていうコメディアンは、ひとりで十万人もの集客が出来るんだけど、ロサンゼルスの『ザ・コメディ・ストア』という小さなクラブで、まだやってんのよ。普段から、普通に。
何故かって、コメディアンはお客さんの生の空気感を忘れてしまったらコメディアンではなくなるから。
もちろんスベって失敗するときもあるんだろうけど、生身の客を前に毎回、挑戦を繰り返しているのは圧倒的な違いだと思う。ネタを披露するからこそ、自分は「芸人」なのだということがわかっているんだよね。