運用のための収益源を増やすと視聴者が離れるというジレンマ
多額の広告掲載料を払えない企業の出稿が増えたとはいえ、YouTube側も広告数を増やしたくて増やしているわけでもないという。
「広告を増やしすぎれば、当然視聴者は離れてしまいます。これは、ひとつの動画に対して事実上流せる広告量の限界があることを意味しています。そうなったときに、視聴者が離れないギリギリの範囲で増やしたのが、“動画の冒頭にスキップできない6秒から15秒の広告を連続で流す”という対応だったのではないでしょうか」
井上氏は、増加する広告が嫌ならば『YouTube Premium』に加入するしかない、というのは致し方ない流れだと語る。
「広告に頼らずに収益を上げられる『YouTube Premium』への誘導は、YouTubeにとって益のあるものでしょう。しかし、あからさまに誘導しては広告主たちからも反発を喰らいますし、そうなっては事業そのものが立ち行かなくなってしまいます。
その点“広告が嫌ならこれもあるよ?”と選択肢のひとつとして提案するのは、ビジネス的には納得できるやり方ですし、問題もありません。
そもそも“いつまでも無料で快適に”というのは、ビジネスである限り当然限界があるものです。新聞、テレビ、雑誌といった“オールドメディア”がかつて価格や品質を維持するために広告を増やしていったという歴史もあるので、今まさに同じことがYouTubeでも起こっていると言えるでしょう」
現状、多額の広告費を支払う大手の広告主は減少傾向で、連続広告表示は避けられない模様。だが、利用者にとっては不便かもしれないが、当然ながらYouTubeが慈善事業ではなくビジネスとして展開されているプラットフォームである以上、かつてのメディアが辿ったようにサービスの中身が変わっていくことは仕方のないことなのかもしれない。
取材・文/TND幽介/A4studio