「1都3県」は繋がりが強い

「ソープランドの口コミ情報」が性感染症予防に役立つ? 静岡大学と長崎大学が日本初「性接触ネットワーク」を分析_4

上の図は、性風俗における都道府県間のネットワークを表したもの。線の太さは、都道府県の間を移動して店舗を利用している男性顧客の数に比例している。

たとえば、1都3県(埼玉、千葉、神奈川)は太い線で繋がれているが、これは東京のソープランドにレビューを書いた男性顧客が、近隣の埼玉、神奈川、千葉にあるソープランドにもレビューを書いていることを表している(その逆も同様)。これに関して伊東助教は、「1都3県の経済圏は大きな塊。この研究は人流データに近く、そのため何か公衆衛生的な対策を行う場合は、これらのクラスタを考えて行う必要がある」とする。

研究のために調査した口コミの数は、重複レビューを除いて約8.9万件。レビューサイト上に書き込まれた男性顧客のハンドルネームと女性セックスワーカーの源氏名をもとに、ウェブスクレイピング(オンライン上の文字情報を抽出する方法)を自動化してデータを収集・解析したそうだ。

今回の研究結果に関して、守田教授と伊東助教は次のように評価する。

「もちろん口コミを書かない人もいるので、理屈としてはごく一部を切り取ったものになりますが、今まで謎に包まれていた全国規模の性接触ネットワークが明らかになったのは、とても有意義なことだと思っています。社会ネットワークの一例として今後の研究に活かされるだけでなく、性感染症の蔓延対策などの公衆衛生の分野において知見を与えるものになればいいなと」(守田教授)

「我々が研究しているのは性感染症ではなく、あくまで社会的なネットワークです。なので、この研究を通して、風俗店が性感染症の温床だというつもりはまったくありません。『人々の繋がりを考える研究』として捉えてほしいですね」(伊東助教)


取材・文/毛内達大 
写真提供/静岡大学工学部、長崎大学熱帯医学研究所