「ここですべてを投げ出すにはまだ早い」

しかしながら、チームの先頭に立つキャプテンが自らのミスに落ち込み、下を向いてしまえば、チーム全体の空気は淀むばかり。せっかくのドイツ戦勝利も、帳消しどころか、むしろコスタリカ戦の不甲斐ない負けを一層強調するものにすらなりかねない。

吉田は、自らを奮い立たせるように言葉をつなぐ。

「個人的にも、日本代表としても、こういう大きな大会、注目される大会では批判がつきもの。それをマネージできなければここには立てない。前回大会の(失点につながるミスをした)川島(永嗣)選手がそういう姿を見せたように、やっぱりもう一回立ち上がらなきゃいけないし、自信と勇気を持って(第3戦の)スペイン戦に挑まなきゃいけない。ここですべてを投げ出すにはまだ早い」

これで1勝1敗となった日本がグループリーグ最終戦で対戦するのは、2010年南アフリカ大会でワールドカップ初制覇を成し遂げたスペイン。現在ヴィッセル神戸に在籍するアンドレス・イニエスタらを擁したころの強さは失われたとはいえ、依然世界トップレベルの力を持つ難敵だ。

そのスペインに対し、日本は勝てば、初の2大会連続となる決勝トーナメント進出が決まる一方で、敗れれば、グループリーグ敗退が決定。引き分けた場合は、同じグループのもうひとつの試合、ドイツ対コスタリカの結果次第で決勝トーナメント進出の可能性を残すことになる。

つまり、スペイン相手に最低でも引き分けることができなければ、今大会の日本の戦いはここで終わり。日本にとっては、かなりハードルの高い突破条件と言わざるをえない。

だが、吉田はこの4年間、常にそうであり続けたように、ここでもまたチームの勝利だけに視線を定め、チームを鼓舞すべく、こう語る。

「スペイン戦に向けて切り替えてやっていくのみ。(大事なのは)もう一回、しっかりといいリカバリーをして、いい分析をして、スペイン戦に向けて準備すること。まだ何も終わっていない。それはドイツ戦の後にも話したが、まだ何もつかみ取っていないし、何も失っていない。(今までと)変わらずに、チームとして勝ち点を取りに行かなければいけない」

偉大なキャプテンが引っ張ってきた日本代表の4年間の戦いは、ここで幕を下ろしてしまうのか。それとも、まだ続きを見られるのか。

運命のスペイン戦は12月2日午前4時(日本時間)、キックオフのときを迎える。


取材・文/浅田真樹