メンテナンスは「洗濯機」で
さて、ここで気になるのが、手持ちのGORE-TEXウェアのメンテナンス方法。伊藤さんはGORE-TEXウェアについて「適切なメンテナンスをして10年使っている方もいる」一方、「メンテナンスをしないと1〜2シーズンでダメになってしまうこともある」と指摘する。
そもそも、ePTFEは人工血管に利用されるほどで、ほぼ劣化しないそうだ。それでもGORE-TEXウェアがダメになってしまう原因の一つは、縫い目を覆う「シームテープ」と呼ばれるパーツにある。
アパレルを着用していると、当然、汗をかくシーンがある。汗は皮脂などで汚れており、それが内部で生地の上に残り続けると、このシームテープに悪影響を及ぼすという。テープが剥がれやすくなり、その部分から常に内部に水が入るようになると、防水性がなくなってしまう。
「首やわきなど、汗が溜まりやすい部分からボロボロになりやすいのは、こうした理由です」と伊藤さん。
では、どうすればいいのか。多くのGORE-TEXプロダクトにおいて、もっとも簡単でかつ効果があるのは、意外にも「洗濯機に放り込んでしまうこと」だという(※製品によっては洗濯機が使用できないものもあるため、使用している製品の洗濯表示は必ず確認すること)。
GORE-TEXプロダクトは洗って機能が落ちるものではなく、むしろ機能を保ち製品を長持ちさせることにつながるので、「ぜひこまめに洗ってほしい」ということは、ゴア社としても力を入れて周知を広めていることなのだそう。
「普通の洗濯機で大丈夫です。洗い方については、まず、アパレルの洗濯表示をよく確認しそれに従ってください。重要なのは、生地の表面に汚れも洗剤を残さず、しっかり流すこと。これが残ると表面の撥水機能が落ち、汚れが水をキープしてしまい、透湿性が下がり、冷たく重い着心地になってしまいます」
ちなみに、GORE-TEXウェアの場合、たとえば「洗剤は、衣料用液体洗剤を少なめに使用すること」「粉末洗剤、漂白剤、柔軟剤、しみ抜き剤の使用は避けること」「洗濯機に入れて、40℃以下のぬるま湯で洗濯すること」「すすぎは2回以上しっかりと、脱水は短時間で軽く行うこと」など適切なお手入れのポイントがいくつかある。
詳細はゴア社の公式サイトで解説されているので、ユーザーはぜひ一度チェックしておこう(https://www.gore-tex.com/jp/support/care/outerwear)。
また、撥水機能については、「熱を加えると回復する」ことを公式サイトなどでも発信している。水を弾かなくなったと感じたら、同様に洗濯表示に基づき、低温の乾燥機にかけたり、当て布でアイロンをかけたりするなどして、熱を加えるといいそうだ。
生地の名前でありながら、それ自体がステータスとなった、稀有なブランドであるGORE-TEX。適切なメンテナンスをしながら、長く身を守ってもらいたいものだ。
文/あまのなお
写真提供/日本ゴア合同会社