「どこに住むか」より「なにをしたいか」
日本各地で移住者を取材していて気がつくのは、「いくつもの候補地を挙げて、その中から最適な場所を選んだ移住者は少ない」という事実だ。言い換えれば、あまり比較検討せずに移住先を決めてしまう人がとても多いのだ。
人生において一大事とも言える、地方への移住。それなのに、入念に比較検討することなく、なぜ決断することができるのか。多くの人に話を聞いているうちに行き着いたのは、「どこに住むか」ということより、「そこでどんな暮らしを営みたいか」をイメージしている人ほど、移住生活を充実させているという結論だ。
「どこに住むか」をゴールに設定してしまうと、場所を選定するとき、慎重になりすぎて、それがすべてになってしまうきらいがあるようだ。
たとえば「のどかな雰囲気のカフェやレストランを営みたい」「川のそばで暮らしてカヤックを楽しみたい」「焚き火やBBQを日常的に楽しみたい」「林業や農業を職業としたい」「マイガレージでDIYライフを堪能したい」といったように、その人なりの目標を設定していれば、自ずと候補地は絞り込まれるであろうことは想像していただけるだろう。
なにより「どこに住む」という発想は、言わばブランド志向の延長線上にある。移住したい人は、それぞれに理想とする暮らしがあって移住するわけだから、ブランド志向で移住したとしても、果たして心の底から満足できる生活を送れるだろうか。その土地に住むというゴールは、移住を果たした直後に達成できてしまう。
もし「○○に住みたい」と決めているなら、そこでどんな暮らしを実現したいのか、一歩踏み込んで考えてみてほしい。そのように思考を深めてみたら、意外に別の土地が候補として浮かんできた、なんてことがあるかもしれない。「なにをしたいか」という問いの先にある候補地はきっと有力だ。
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続く中編では、移住先選びや住まい探しで気をつけるポイントや心得を紹介しよう。
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