逃げることも勧める「破壊王」橋本の回答

続いては、アントニオ猪木さんに憧れて新日本プロレスに入門したプロレスラーの橋本真也さん。巨漢を揺らした激しいファイトでファンを魅了しましたが、2005年に40歳の若さで世を去りました。

破壊王と呼ばれた彼に、26歳の男性が「ものすごく嫌いな人がいます」と相談を持ちかけます。「相手もボクのことを嫌っていますが、仕事上の付き合いは避けられません」とのこと。人間関係が原因で会社が憂鬱になっている相談者に対して、橋本さんは「それがライバルなんだよ」と背中を叩きつつ、具体的な作戦を授けます。

〈そいつが陰気なヤツなら意地悪されるかもしれんけど、それにも立ち向かわないかんのよ、人生は。そこで逃げとったら、お前は負けだ! 嫌なヤツも自分の先生としなくてはいけないって、偉い中国の先生も書いてたよ。それでも嫌だったら、椅子の下に画鋲やブーブークッションを置くとか、ちょっとした意地悪をすればいいからな。仲良くなりたかったら、殴り合いの喧嘩でもして認め合うか、それでも嫌だったら逃げるか、そいつを追い出すかしかないだろ。とにかく合わないヤツは絶対に合わないからな〉
※引用:「紙のプロレス」編集部編『紙の破壊王 ぼくらが愛した橋本真也』(エンターブレイン刊、2005年)

「破壊王」のニックネームのとおり、なかなか破壊的な回答です。逃げてはいけないと言いつつ、逃げる選択肢もあると言っていますが、そこに矛盾はありません。きっと、合わない相手との戦いから逃げてはいけないけど、逃げるという戦い方もあるという意味です。画鋲やブーブークッションを使った意地悪も、非現実的に見えますが、深読みして「手段を選ばない覚悟を持て」という意味だと受け止めたいところ。

「嫌いな人がいる」と悩んでいても何も変わりません。橋本さんは勢いのある熱い口調で「まずは行動を起こせ」と言ってくれています。たしかに、それは憂鬱を撃退する唯一の方法と言えるでしょう。

天国からアントニオ猪木と橋本真也が「会社が憂鬱」と悩む若者に喝を入れる_2