「ウンチクを知ったからラーメンの味が変わるわけではない」
ここに来たら絶対トッピングしたくなるのが「二色の味玉」。
「藁」の味玉は、塩味と醤油味の「二色」でトッピングされてくるのだ。そもそも、2種類の味玉を作ること自体が凄いのに、それを半玉ずつ入れようという発想も凄い。
スープの中だとそれほど味の違いは出ないのではと思い、食べてみると、驚くほどに味わいが違うことに気づく。しかもどちらもマッチしていて美味しい。食べながら「これは面白い」と感じた。これが廣田さんの狙いなのである。
「自分のラーメンは“普通の中の最高“になれればいいなと思って作っているんです。派手な個性や奇をてらったことはできないので。そのためには“普通”の中に“面白さ”を組み込む必要があるなと思いました。醤油と塩で印象を変えたかったので、スープだけでなく麺も変えました。二色の味玉も“面白さ”を狙ったトッピングです」(廣田さん)
このシンプルな中での新しさが「TRYラーメン大賞」の評価に繋がったのだろう。
「地元密着で細く長く続けていきたい」
これほどまでにこだわり尽くした「藁」のラーメンだが、店頭や店内の壁にはウンチクが一切貼られていない。
これは筆者が入店してまず思ったことだ。
「お店でお客さんにくつろいでいただくことを考えると、ここはリビングルームです。そうなるとウンチクなどの予備知識は不要かなと思いました。ウンチクを知ったからラーメンの味が変わるわけではありません。食べて美味しく帰っていただければそれで最高だと思いますので」(廣田さん)
こだわりを書かないことが廣田さんのこだわりなのだ。“普通の中の最高”になるためにはウンチクは必要ない。
「まさかうちが受賞するとは思っていなかったのでとても驚いています。『進化』の看板に泥を塗らないように、少しでもかすってくれればと思っていたので大変嬉しいです。これからも地元密着で細く長く続けていきたいと思います」(廣田さん)
とてもまっすぐな廣田さんの思いが一杯のラーメンの中に詰まっている。ラーメンの美味しさだけを持ち帰ってもらえれば、廣田さんの思いはしっかりと伝わっている。
取材・文・撮影/井手隊長