官庁横断的タスクフォースによる調査を進言
ただ、フレイザー委員会は教会の組織的特性については的確に見抜いたものの、教団資金の流れは充分に解明できずにいた。
そこで、報告書は今後の課題として、文鮮明機関全体の財務申告をIRS(合衆国内国歳入庁:日本の国税庁のあたる)が強制捜査をすること、議会の歳入委員会や財務委員会が免税措置乱用禁止の立法が必要かどうかを検討すべきと提唱した。
文鮮明機関が引き起こすさまざまな社会問題は、60年代半ばからアメリカの各政府機関で憂慮されてきたが、連邦行政府、議会、州政府、地方当局などの対応がバラバラで、中途半端だったことは否めない。
国務省、移民帰化局(INS)や司法省などが別々に文鮮明機関の調査をしたが連携がなく、結果として徒労に終わったと報告書は述べているほどだ。そうした反省の上に立ち、報告書は今後の課題として証券取引委員会(SEC)や歳入庁(IRS)なども入れて、官庁横断的タスクフォースを作ってさらに調査を行うべきことを進言したのだ。
日本ではようやく岸田首相が宗教法人法にある「質問権」行使による教団調査を文科省に指示したが、苦情や被害などの実態把握のために消費庁や法務省も動くなど、政府部内の役割分担はどうも釈然としない。
これではまるで60年前のアメリカ政治のレベルと同等と言われても仕方ない。官庁横断的なタスクフォースが必要というフレイザー委員会の指摘は今後の日本にとって参考になるはずだ。