グラミチらしいウェビングベルトは、機能性の追求から生まれたディテール
グラミチが開発したクライミングパンツには、そのほかにもさまざまな機能が搭載されていた。
しかしその後ブランドが成長していくとともに、コアなクライマーだけではなく一般的なアウトドア好き、それどころかほとんどアウトドア活動はしないにもかかわらず、街でそういう服を着るのが好きな人たちにも、グラミチ支持者が増えていく。
そうした客層に対応するため、グラミチは少しずつ、クライミングだけに特化した機能は省くようになっていった。
しかし、グラミチのパンツのもう一つの大きな特徴である、ウェストサイズ調整のための“ウェビングベルト”は、現在のどのパンツにも必ず施されている。
ウェビングベルトは非常にうまくできていて、ウェストサイズを調整したいと思ったらベルトの先の方を引っ張るだけでOK。
ガジェットクロッチと同様、現在では多くのアウトドアウェアやスポーツウェアに採用されているこの仕様、やはりグラミチの考案だったのだ。
ベルトを締めたり緩めたりという動作を、手袋をつけたまま片手でおこなうことができるウェビングベルトはデイパックのストラップと同じ構造だ。
それもそのはず、ウェビングベルトはパタゴニアのバックパックのハーネス用バックルがヒントとなって誕生したのだ。
グラミチ創業直後、アイデアマンのマイクに目をつけたパタゴニア創始者のイヴォン・シュイナードは、自社製品の製作を依頼した。
この発注により、グラミチのガレージはアトリエとしての機能を充実させていったのだが、マイクはパタゴニアのデイパックを見ていて、ウェビングベルトのアイデアが湧いてきたのだという。
ウェビングベルトは、後ろ側の腰のあたりで少しだけ露出するような構造になっている。ロッククライマーはここに、カラビナでチョークバッグをぶら下げるそうだが、僕は車のリモコンキーをぶら下げたりしている。
話を戻そう。
僕が買ったガジェットパンツは、こうしたグラミチならではの基本的機能性が搭載されていて穿きやすく、そのうえトレンドを踏まえたシルエットやディテールが冴えている。
今シーズン、すでにかなりのヘヴィローテーションとなっているが、愛着は増していくばかりだ。
なので、皆さんにもおすすめしたいと思います。
文/佐藤誠二朗