妻の前に置かれた飲み物と、自分の前に置かれた飲み物を、
そっと入れ替える日常

お酒が好きな妻に対し、僕は下戸だ。
だから外食の際には、店員さんが黙って置いた僕の前の生ビールと妻の前のコーラを入れ替えてから飲みはじめるのが常である。
実際、世の中では夫が酒で妻がソフトドリンクという組み合わせの確率が多いのだろうから、気を効かしたつもりの店員さんを責める気はないが、これはこれで一種のジェンダー不平等の現れではあるまいか?などという考えも頭をよぎる。

中学生の娘を含む一家で食事に出かけると、ことはもっと複雑になる。
僕の前にハイボール、妻の前にジャスミン茶、そして娘の前にはカルピスソーダが当たり前のように置かれる。

残念、全問不正解だ。

娘は小さな頃から、なぜか甘い飲み物をあまり飲まないのだが、僕はこれまでの53年間の人生、一貫して甘い飲み物を好んできた。
店員さんが立ち去ったのち、妻にハイボール、娘にジャスミン茶、そして僕にはカルピスソーダと、正しく配置し直すことになる。

日本人を含む東アジア人は、欧米人やアフリカ人と比べ、遺伝的に酒に弱い人が多いという。
体内でアルコールを無毒化する酵素を作る遺伝子を調べたところ、日本人集団では「酒に強くどんどん飲めるタイプ」は約64%、「そこそこ飲めるけど酔いやすいタイプ」は約32%、そして「一滴も飲めない真の下戸タイプ」が約4%だったという調査結果があった。
欧米人やアフリカ人はそのほとんどが「お酒に強くどんどん飲めるタイプ」らしいので、日本人は遺伝的特性上、お酒に弱い人が多い集団ということになるのだ。

僕の場合、昔から酒は苦手だが一滴も飲めないわけではない。
でも、気持ちよく飲めるのは、ビールの場合はコップ半分ほどであり、それ以上飲むととたんに頭が痛くなってくる。
コロナ禍になってからそんな機会もとんとなくなってしまったが、大勢が集まる飲み会などでは、最初からソフトドリンクを頼むと興醒めしてしまう人もいるようなので、とりあえず一杯だけはお酒を注文。
乾杯して半分ほど飲んだら、人知れずそっとソフトドリンクに切り替えることにしている。

下戸は下戸で、なかなか苦労が多いのだ。