なりたい! なりたい! 本能のままにすべてをたたき切る、一振りの刃になりたーい!
…社会の荒波に揉まれてもう10年、20年。言われたことだけやって自分を伸ばしていればよかった時代はもうとっくに過ぎ去った。周りから求められるのはリーダーとして、マネージャーとしての総合力、調整力、管理力。
あのね、そういうのはもういいでしょう。世界が一周回って求められるのは、不器用力! 人間としてのレーダーチャートがめちゃくちゃにとがって破綻しているほど人生は楽しい。中途半端な器用貧乏で人生を終わらせたくなければ、問答無用で『アラタの獣』を読め!
2030年、東京湾市最大の繁華街であり異形化ヤクザ組織・箆鮒會(へらぶなかい)が幅をきかせる混沌の街、希望捨(きぼうすて)ストリートで、心の内に激しい衝動を秘めながら暮らす主人公・泊黎(とまりれい)が、謎の少年アラタと出会うことで壮絶な死闘に巻き込まれていくこの物語にて、「不器用に生きることがいかに簡単なようで難しく、そして美しいか」を魅せてくれるのが、黎を襲撃する異形化ヤクザ・荼毘泥(ダビデ)だ。
“御本尊”から力を与えられ、海洋生物を模した姿に変身した荼毘泥が、黎と切り結びながら叫ぶ「ドスの仕事ってのはよォ 殺す以外要らねえ!! だから斬れんだよ!! だからもっと! 俺はもっと! 不器用になるゼェェッ!!」は人生の心理! シンプルな哲学は、それゆえにしなり、折れない。目の前の一つのことだけを、常軌を逸した強度で練り上げる生き方は、成功した場合にはこれ以上ない輝きを放つ。
お魚くわえたドラ猫を追いかけることに全人生を賭けて財布を忘れても全然いいし、なんだったら服を着るのを忘れて全裸で走り回ってもいい。意味深なことを書いてうまいこと言った感を出して締めようとしたけど、全然うまく言えていないし、残念ながらこの生き方が称賛される世界は現世には少ない! 一本のネジとして人生を終えたい!
『アラタの獣』
原作/本兌有・杉ライカ 作画/羽生生純
1〜2巻発売中/KADOKAWA
月刊「コミックビーム」連載中
近未来の東京を舞台とした、泊黎と異形化ヤクザとの壮絶な死闘! 『恋の門』の羽生生純と『ニンジャスレイヤー』の本兌有+杉ライカが描くアクション活劇、開幕!
©田中一行/集英社