大麻所持の犯罪歴が抹消される

まずは、単純な大麻所持を理由に連邦裁判所で有罪判決を受けた人に恩赦が与えられ、これによって、犯罪歴は自動的に抹消される。バイデン大統領も指摘したように、この犯罪歴によって雇用や住宅購入、教育などの機会が奪われてきたため、当事者にとっては重大な問題であった。

連邦当局によると、1992年から2021年に大麻所持で有罪となった6,500人以上が恩赦の対象になるという。しかし、この他にも各州の裁判所で有罪判決を受けた人が相当数いるため、バイデン大統領は全米の州知事に対して同様の措置を取るように求めた。

州レベルの大麻解禁が進む米国では、すでに38州が医療用を、19州が嗜好用を合法化したが、一方で、残りの約10州は非合法のままになっている。

州法と連邦法の大麻規制が異なるため、たとえば、合法化された州の法執行機関が連邦捜査官と対立したり、それらの州の住民が大麻を使用した場合、連邦捜査官に逮捕されるかもしれないという不安を完全に消すことができなかったりなど、様々な問題に直面していた。

州法と連邦法の違いをいかに埋めるかは喫緊の課題だったが、今回の恩赦はそれに対処するための1つの方法でもある。しかし、恩赦はあくまで有罪判決を受けた人が対象なので、根本的な解決にはならない。

だからこそバイデン大統領は、大麻の医療目的の使用も禁止した「薬物規制法(CSA)」の見直しを検討するとしたのである。

1970年に制定されたCSAについては拙著『世界大麻経済戦争』でも詳しく述べたが、これは薬物を乱用の危険性や依存性の強さ、医療効果の有無などによって、規制レベルの高い順に「スケジュールI 」~「スケジュールV」に分類したものだ。

バイデン大統領の「大麻恩赦」は米国と日本に何をもたらすか_2

問題は、総合的な危険度はカフェインと同等程度とされる大麻が最も危険なスケジュールⅠに分類されたことである。これにはCSAの制定を主導したニクソン大統領(当時)の個人的な思惑(大麻嫌いの)が反映されていると指摘され、専門家の間でも疑問が呈されてきた。

有力紙『ニューヨーク・タイムズ』も大麻解禁の機運が盛り上がった2014年、社説のなかで、「大麻より危険性、依存性が高いとされるコカインやメタンフェタミン(覚せい剤)はスケジュールIIに分類されている。これは実質と刑罰のバランスを欠いているのではないか」(7月27日)と批判した。