今季の観客動員数はセ・リーグ最多
開幕9連敗で始まった矢野阪神ラストイヤー。連敗脱出を期待した「あと1球コール」からの敗戦もあった。ヤクルト村上宗隆選手と真っ向勝負して散った一戦もあった。
代走・熊谷敬宥選手の走塁と守備で勝った試合もあった。コロナで出遅れた青柳投手の華麗な復活劇もあった。糸原健斗選手の見事な“事起こし” (犠飛や内野ゴロで1点を奪うような打撃)で拾った試合も、拙守で落とした試合もあった。夏場にはチーム内にコロナが蔓延しての連敗もあった。
このようにドラマ性に満ちあふれている矢野阪神だが、矢野監督が就任した4年間は3位、2位、2位、3位と毎年Aクラス入りを果たしている。昨季はわずか勝率5厘差での2位と涙を呑んだが、もし優勝していたら今季の結果も違ったものになっていたかもしれない。
だが、矢野阪神はレアル・マドリーのように、終わってみれば最後に勝つ常勝軍団ではない。試合展開はとにかく高低差が激しく、連勝で期待させたかと思えば、ホームで大型連敗を繰り返す。
ある意味、エンタメ性はとてつもなく高く、あれだけ連敗しても甲子園は超満員だった。ファンを振り回し、夢中にさせた結果、今季のセ・リーグ最多観客動員数につながったのだろう。
そもそも矢野監督の采配は常に論理的というわけではなく、監督自身が掲げていたようにまさしく「俺たちの野球」。プロ野球の監督というよりは、夢と理想を追い求める学校の「先生」のようだった。
これまでの阪神ならば、勝たなきゃいけない試合でも負けが濃厚になったら淡白に負けていた。だが、矢野阪神は最後まで諦めなかったし、全力疾走もやめなかった。ここは今までの阪神と明らかに違った。