「ガラパゴス化」する日本の防衛産業

こうした「輸出不振」を背景に、国内では防衛ビジネスから撤退する企業が相次いでいる。その数は2003年以降、すでに100社を超えるほどだ。防衛装備の納入先は防衛省一択のみ、しかも武器は少数製造が多く、企業として利益を見込めないためだ。

しかも、その防衛省の研究開発費も潤沢とはいえず、国家支援を期待できない企業は独自開発するしかない。その一方で、受注が少ないので資金面で技術者の育成はおぼつかない。これでは国産武器は世界の市場ニーズにもついて行けず、ますます適応性と生存能力が劣り、いずれは淘汰されるという「ガラパゴス化」が進む一方だ。

こうした悪循環が続くかぎり、日本の防衛産業は成り立たず、いずれも国防にも綻びが出かねない。有事の際の継戦能力を維持するためには装備品を生産する防衛産業はなくてはならないものだからだ。

アメリカの巨大な兵器産業ですら、そのバックには米政府がついている。武器売り込みの交渉は政府間同士による「対外有償軍事援助(FMS)」制度=対外軍事援助プログラムが基本だ。

装備品の教育、訓練までもがパッケージとして米政府から提供されるため、兵器の値段は本来より高騰し、それが米兵器産業のさらなる輸出額アップに貢献している。

岸田政権は年末までに改定を予定する「国家安全保障戦略」の中で、防衛装備品の海外輸出を「国主導」で推進する方針を打ち出し、国内防衛産業を育成する姿勢を見せているものの、具体的にはなっていない。アメリカのようにとは言わないまでも、せめてライバル国・韓国並みくらいの育成手腕を見せてほしい。

文/世良光弘  写真/gettyimages KAI