2021年にグッドデザイン賞を受賞
自分が理想とするリノベーションの方向性と合致していた菊池さんは、早速、池上さんに依頼。池上さんも「中国の経験が生かせるのではないか」とふたつ返事で快諾したという。
ただし木造建築を映画館にリノベーションするのは消防法や興行場法で厳しい基準があり、相当ハードルが高い。特に今回は、天井や壁に張り巡らされていた梁をそのまま活用しており、その解体工事だけでも2か月を要したという。費用もかさみ、最終的には予算を遥かにオーバーする約1億円に。
それでも館内に入ってまず目に飛び込んでくる梁は、木造建築の良さを実感させてくれるシネマネコの名物に。愛らしいブルーの外観も手伝って、2021年度のグッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)の「商業のための建築・環境」分野で受賞に輝いた。
「木造建築を商業施設に改修した例として評価頂き、映画ファンだけでなく建築家の方が参考にと来館してくれる。織物の街である青梅の歴史も、映画と共に伝えられたら」(菊池さん)
「建築を一から作る楽しみもありますが、歴史を紡いでいくのも大切。青梅には古くて魅力的な建物がたくさんあるので、そんな仕事に自分がどうやって関わっていけるのか。それがこれからの自分のテーマかなと思っています」(池上さん)
9月15日には、地域の高齢者の声を反映した映画館入り口のバリアフリー化も完了。講座のみならずコンサートなどのイベントも増え、訪れる幅広い観客たちの息吹がシネマネコを進化させていく。
文/中山治美 構成/松山梢