アルミ建材メーカー・ツヅキで、5年連続黒字を叩き出す

現在髙橋氏は、大阪府東大阪市に本拠を置くアルミ建材メーカー・ツヅキの代表取締役社長を務めている。社長就任から今年で10年が経つ。

ツヅキへの社長就任も、創業者から同社の経営の刷新を求められたのがきっかけである。髙橋氏の就任以後、ツヅキの従業員は50名ほど増加し、新規事業を複数打ち出して経営の安定化を図った。コーポレートサイトに公開されている財務情報によれば、ツヅキの営業利益は2018年から5年連続で黒字だ。

「就任時点から人件費は2億円以上増えていますけど、黒字決算が続いています。事業計画はぼちぼち上手くいっているので、あとは後の世代に会社をどう引き継いでいくか、でしょうね。『髙橋さんに騙されて入社しました』と言ってくれる若い社員もいるので、その子たちに不幸な思いをさせないようにするのが 、今の僕の仕事です」

今年、髙橋氏は65歳。経営者として残された時間には限りがある。どのように会社を継承していくのかが目下の課題だ。それを知ってか、M&Aによる事業継承を提案してくる金融機関やコンサルティング会社は多い。しかし、その誘いは一貫して断り続けている。

「中小企業や零細企業を存続させるという名目で、その実は食い物にしているM&Aが目につきますね。M&Aは資本効率が良くないし、中間業者だけが儲かっているケースも多いと思います。だから、僕は会社を売りたくもないし、買いたくもない。もし仮に合併するにしても、中間業者は必要ありません。合併相手は新聞に全面広告を出して見つけて、交渉は全部、僕がやりますよ」

M&Aを提案してきた初対面の金融機関の担当者に「僕の経歴を調べてから来た?」と尋ねたことがあるそうだ。担当者は意味が分からず、ポカンとしたまま黙っていた。まさか目の前にいる経営者が、組織の建て直しに生涯を賭けてきたエキスパートだとは、思いもよらなかったに違いない。