たくさんの人に届けないといけない
――『マイ・ブロークン・マリコ』(2022)は、親友の遺骨を遺族から奪って一緒に旅に出るという衝撃的なストーリーを描いた同名漫画の映画化です。出演が決まったときの感想を教えてください。
タナダユキ監督の作品はもともと見ていて、いつかご一緒したいと思っていたので、純粋に嬉しかったですね。タナダさんの描く女の子って、可愛いだけじゃない、人間くさいところを大切にしているように思うんです。愛を持って作品を描いていらっしゃる方だと思ったので、「タナダ監督の描く世界に入りたい」という気持ちをすごく持っていました。今回、それが叶ったっていうこともありましたし、原作を読んで大号泣した『マイ・ブロークン・マリコ』を、タナダさんがどう描くのか、ワクワクしました。そして、絶対またいつか共演したいと思っていた永野芽郁ちゃんが、この作品に座長として立ってくれるということで、「こんなに大きな船はない!」と、すごく幸せな気持ちでしたね。
原作を読んだときは、たくさんの人に届けないといけない作品だと強く感じました。大切な人の死に向き合うことは、私自身、生きている中での試練だと感じていて、その経験をせずに生き続けることは難しいと思うんです。シイちゃん(シイノ)が、マリコの死という試練を突然突きつけられて、乗り越えていくまでの姿を見せてもらえたことに、私自身、とても救われたんです。なので、映像化することで、原作も含めてより多くの方に届けたいと思いました。
――マリコ役を演じるにあたり、役作りで気をつけたことや工夫したことは?
私は今までも、過去に何か苦しい経験を持っている役を演じることが多かったんです。マリコもそういう役だったので、役と向き合うときに、悲しいだけの人生ではないってことを、すごく大事にしたいなと思いました。マリコは自ら命を絶つ選択をしますが、その結論に向かって演じることはやめようという思いが強くて。マリコ自身、ときには悲しいこともあったけれど、ときにはうれしいこともあったわけで。シイちゃんが隣にいたことが希望だったという、キラリと光る部分を見つけて演じました。
――タナダ監督に役作りについて相談はされたんですか?
初めてお会いしたときに、原作についてお互いの思いを共有する中で「同じ方向を見てる!」という感覚があったんです。友情という、ひとつの単語だけで表せないシイちゃんとマリコの関係に強く惹かれているという部分が、監督とは共通していました。監督は、“この役をあなたがやっていいんだ”と俳優に思わせてくださる方なので、私も不安なところは絶対に監督が助けてくれるはずという気持ちで演じることができましたし、シーンごとにOKが出るのも早かったです。