なぜ日本では歴史問題に関する作品が作られないのか

日本人が知らない“韓国現代史最大のタブー”「済州島4・3事件」の真実_5

内田 今、韓流ドラマでは、李氏朝鮮末期から植民地時代に至る、日韓関係をテーマにした作品が数多く作られています。この時期の日韓関係というのは、自国の歴史の暗部なわけですから、韓国人のクリエーターにしても、非常に描きにくいと思うのですが、果敢に挑戦して、良質のエンターテインメントとして仕上げている。

でも、同時期の日韓関係にかかわる歴史ドラマを日本人は作らない。素材としては非常に面白いのです。でも、誰も手を出さない。だから日韓の近現代史について、両国の一般市民の知識には大きな格差が生じています。これは危機的なことです。歴史を知っている国民と知らない国民の間で相互理解が成り立つはずがないからです。

ヤン 在日の歴史は日本の歴史でもあり、実は済州島4・3事件も大阪の歴史と直結します。生野区だけではなく、大阪市は蓋を開けると在日が多いですから。こうした問題を自分ごととして受け止められたら、日本の作り手たちももっと面白い作品を作れると思うんです。

帰国事業で94,000人もの人々が日本から北朝鮮に渡ったというのは、移民の歴史として世界的にも稀なわけです。それなのに、そのことについて描かれている作品があまりにも少ない。悲しい歴史ではあるけれど、コメディや心温まる物語という形で出てきても良いと思うんです。私は、アンタッチャブルに扱われている部分を打ち破っていきたいんです。

内田 在日コリアンの歴史を描いた小説『PACHINKO』はアメリカで大ヒットしましたし、ドラマにもなりましたが、日本のメディアはどちらもほとんど取り上げませんでした。主な舞台は日本で、多くの登場人物が日本語を話すという物語なのに、メディアは目を逸らしている。これは異常だと思います。

ヤン 日本では政治的なものを放映できないと言われているけれど、中国や朝鮮みたいに検閲があるわけではないので、作ればいいと思います。海外では日本について学ぶと、必ず在日に辿り着くんです。そこを突き詰めると日本がさらによく見えたりもする。それなのに日本人は本当に歴史を知らない。

韓国では昨今、映画などで民主化を取り上げている作品が多いですが、民主化は80年代から始まったのではなく、それこそ済州島4・3事件の頃から脈々と続いてきたんです。何故そこまで戦えるのかと韓国の人に聞くと「国というのは、狂ったらあそこまで狂うんだ。自分の国が腐り始めた時は見過ごさず、止められるところで止めなければならない」と言い、歴史を長い「線」で見ているのだと感じました。

また、韓国を描こうとすると、日本についても詳しくないといけないということを韓国の作り手はよく分かっています。日本人が歴史を「点」で捉えているのとは対照的です。

様々な歴史を経て、現代に生きる私たちが互いを理解し合うためには、タブーにして語らないのではなく、本当のことを示すべきだと思います。済州島4・3事件で韓国が何をしたのか。生存者たちが生きている間に、真実を明るみに出そうという動きができたことは本当に良かったと思っています。微力ながら今後私も発信していきたいです。