教育の平等と公平性がゆらいでいた

教育現場でいったい何が起こっていたのだろうか。

フィンランド教育文化省や専門家によれば、2012年のPISAの結果が出る前から、フィンランドの強みであった落ちこぼれの少ない、比較的一律だった学習成果に差が生じ始めていたという。その差は、親の社会経済的背景によるものが大きいとわかっている。以前は、どんな家庭の出身でも、子どもの学習成果に大きな影響は出ていなかったが、経済的な違いが如実に現れるようになってしまっていたのだ。

次に、男女間の差も大きくなった。女子の学習成果は非常に高い一方、男子は下がっている。理由としては、男子の読書離れと読解力低下があるという。PISAの試験はどの科目であれ、読解力が求められるが、今の男子は読書の楽しみを得られておらず、ネットやゲームがその傾向を助長させていると報告書では述べられている。

さらに学校間の差、移民人口の増加、地域格差も、以前にも増して顕著になった。そして支援が必要な子どもが年々増えていることも課題の一つとして挙がっている。全体的に特別支援の専門知識を持った教師が不足していたり、支援の必要な子どもに重点をかけすぎるあまり、他の子どもたちに注意が回らなかったりという状況もあった。

こうした格差は勉強への興味を失わせ、親の学校への期待値を下げ、お金の余裕のある家庭が子どもに学校以外で教育の機会を与えることにもつながる。世界的に見れば、まだまだ地域や家庭の経済状況による学力差は非常に少ないが、かつてフィンランドが誇りにしてきた平等と公平性にゆらぎが生じてきているのも事実なのだ。

一方で、心理学の専門家の調査では、生徒が競争や期待などのプレッシャーを感じていたり、先生や家庭からの支援の不足により孤独感を抱いていたり、学校外の活動が忙しく心身共に疲れていたりすることが指摘されている。さらに、学校や授業の在り方が「時代遅れ」と感じている子どもたちも多く、勉強に興味や意欲のない冷めた声も少なくなかった。